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2008-02-08 00:00
(連載)洞爺湖サミットへ向けた日本の国際環境協力(4)
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
GHG削減につき、一方で世界全体の削減目標から割り出された義務的国別削減目標を提示することは重要であるが、他方でこの国際的に合意された国別削減目標を達成できるよう産業界を指導することも不可欠となる。しかし、「ボトムアップ」方式による削減目標の設定は各国の自主性を尊重するが余り、地球温暖化防止のための世界的合意の達成を困難にする危険性が高い。特に、この方式では、参加する世界各国の産業別、分野別の詳細なデータが必要不可欠であるが、今日のグローバル化した世界経済・産業では、世界経済の変動や技術の進展等について不確実性が高く、途上国はもちろん、大量GHG排出途上国でさえも、将来のGHG削減ポテンシャルを正確に予測することは困難であり、そのためには相当の準備期間が必要となる。
その結果、2009年末までに新しい国際的枠組みを構築するというCOP13におけるバリ合意の達成が困難となることは明白である。すなわち、この「ボトムアップ」方式の提案に固執することは、見方によっては、2009年決着という国際的合意を反故にする提案であると見られても仕方がない。「ボトムアップ」方式に、実効性ある地球温暖化防止におけるなんらかの意義を見出すとするならば、「トップダウン」方式による世界的削減目標を実現する上での、各国政府がとるべき対策のベンチマークを提供することかもしれない。
また、排出量基準年の変更は、京都議定書で採択された国際的な基準年である1990年を、エネルギー効率進展前の特定年にするか、あるいはエネルギー効率が先進諸国で平準化してきた2000年以降にするかの選択になる。確かに1990年が基準年として妥当であるかについては、早くから日本国内で議論されてきた。また、この点でEUが若干軟化してきているという報道もあるが、実際には、世界全ての国々、特に義務的削減を負っている国のみならず、今後何らかの義務的参加を期待している中国、インド等の大量GHG排出国すべてにとって、妥当な基準年を設定することは相当困難な国際交渉となるであろう。このような国際交渉に長けていない日本が、残された一年有余の間に、基準年の変更を国際的に纏める能力と意欲があるかは甚だ疑問である。
なお、日本の環境関連技術の途上国への移転についても、エネルギー効率向上技術やその他温暖化防止技術の開発や移転は民間企業が主導するところであり、政府がその対途上国移転を直接的に促進することは不可能であるが、税制面、金融面、行政面等を通じ、さらに知的所有権の効果的管理を含めた国際的な仕組みを通じて、民間企業へのかかる技術移転を促進したり、途上国での技術開発の促進を支援することは可能であると考える。
結論的にいえば、わが国としては、洞爺湖サミットでの合意に向けて、福田総理の提唱(本欄2月7日付け投稿496号拙稿ご参照)のうち(1)、(2)、(5)、(6)につき、G8諸国、GHG大量排出国、さらにアセアン諸国、アフリカ地域等の途上国を根気強く説得して、地球温暖化対策での世界的指導力を発揮することが重要となる。また、対外説得活動を効果的なものにするためにも、(1)とそれに関連する世界の中期的目標をわが国のGHG削減下限目標として、国内産業界を説得し、時宜を見た環境税ないし地球税の導入、国内排出権取引市場の早急な整備を進めると同時に、(5)の新しい資金メカニズムの詳細を早急に検討すべきである。さらに、必要があれば、その上積みをCOP14で発表し、地球温暖化防止・適応に多大の関心をもつ途上国の支持を得て、早くから国際社会で指導力を発揮することが不可欠である。(おわり)
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