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2008-02-07 00:00
(連載)洞爺湖サミットへ向けた日本の国際環境協力(3)
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
福田総理は先月26日スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会で特別講演をし、地球温暖化問題についてもいくつかの具体的提案をおこなった。総理は、米国のサブプライム問題に端を発する世界的な株安と景気後退への世界的取り組みの必要性や、漸く元気付いてきたアフリカの経済成長・貧困撲滅へ向けた国際社会の一層の努力を訴えると同時に、低炭素社会の構築こそ、エネルギー効率が比較的に高いわが国が世界的、地域的に指導力を発揮して、国際的な枠組み作りに向けイニシャテイブをとれる分野である、との理解に立ち、洞爺湖サミットの主要課題でもある地球温暖化対策について、従来以上に踏み込んだ発言と提案を行った。その内容は、国内外で広くマスコミで報道されたが、基本的には下記のとおりである。
(1)2050年までに世界全体のGHG排出量を半減する。(2)2020年までに世界全体でエネルギー効率を30%改善する。(3)世界各国は中期的なGHG削減目標を設定するが、その国別削減目標の設定では、各国が自国の産業別・分野別の目標を定める、いわゆる「ボトムアップ」方式をとることにより、削減負担の公平性を確保する。(4)1990年以前にエネルギー効率を急速に高めた日本としては、国際的な公平の見地から、1990年という基準年を見直す。(5)途上国がGHG削減に積極的に参加できるよう、日本としては100億ドル規模の新たな資金メカニズムを構築するほか、欧米諸国と協力して新たな世界的な資金メカニズムを構築する。(6)日本の優れた環境関連技術の途上国への移転を促進する。
さらに、帰国後の衆議院予算委員会で総理は、2050年までの世界全体のGHG削減目標(50%削減)は、わが国に課せられた最低国別目標でもあり、世界全体の削減目標が達成できないと予想される場合には、それ以上の削減目標の設定が必要となる可能性があるとして、積極的な削減総量目標を打ち出した。総理の気候変動に対する基本的姿勢は、安倍内閣に対比すると、具体的な数値目標を掲げたこと、さらに世界全体の削減総量目標に合致したわが国の削減目標を積極的に設定した点で、一歩前進であると評価したい。(1)と(6)は安倍前総理の「21世紀環境立国戦略」の「美しい星50」をそのまま踏襲したものであり、具体的な目新しい提案ではない。
問題となるのは、(3)である。これは日本が米国、豪州、韓国、中国、インド、カナダ(オブザーバー参加)等と積極的に進めてきた「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)の基本路線に合致したものである。APPでは、8つの産業別タスクフォース(TF)を設けているが、日本は鉄鋼とセメントのTF議長国となっており、それぞれの産業での国別二酸化炭素削減ポテンシャルについて調査・提言している。この「ボトムアップ」方式は各産業界の経済的・技術的状況を反映した現実的方式であり、各国産業界に受け入れやすい方式であるが、この削減ポテンシャルが各国の産業別削減目標となると、どうしてもこれを積み上げて作成される国別総量目標が、国際的に合意された世界全体のGHG削減総量目標(例えば2020年までに20%削減、2050年までに50%削減)を下回る可能性が大という難点がある。(つづく)
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