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2008-01-21 00:00
民主主義強調は日本の国益に反する
山下英次
大阪市立大学大学院教授
アジア統合に関して、民主主義をやかましく言う日本人が多いが、もし本当にそれが大きな問題だというのなら、今のアメリカで実現している民主主義のレベルにも我慢がならないはずである。然るに、アジアにおける民主主義を云々する人で、現在の米国における民主主義の問題点を厳しく指摘している人は非常に稀である。私は、今の米国で実現している民主主義のレベルは、成熟した民主主義国の中で最低ではないかと厳しく指摘している。ヨーロッパの識者の中には同調者も少なくないが、日本でのそれは非常に少なく、寂しい思いをしている。
2001年3月、ブッシュ大統領は、京都議定書からの離脱を宣言したが、これは国際的な合意を反故にしたものであり、明らかに国際社会を愚弄するものである。しかも、その前後から、ブッシュ政権は、地球温暖化の効果に関する米国内の言論を弾圧してきた。地球温暖化に関する報告書に対して、ブッシュ政権は大幅な訂正を求めたし、地球温暖化に警鐘を鳴らす科学者に対しては、講演しないように圧力がかけられたということまであった。成熟した民主主義国として、決してあってはならないことである。
加えて、イラクのアブ・グレイブやキューバのグアンタナモ収容所におけるジュネーブ条約違反行為、2004年の大統領選挙におけるブッシュ政権側のあからさまな政教不分離の選挙運動など、近年における米国の民主主義の侵害には目を覆いたくなるばかりである。こうした状況であるにもかかわらず、米国批判を避けてアジア諸国に対してのみ民主主義を布教しようとすれば、日本は二重基準であるとのそしりを逃れられないのではないだろうか。
「ASEAN+3」等のアジア統合関連の枠組みで、日本側が民主主義を強調するのには、多分に中国を牽制しようという意図が感じられる。しかし、前回投稿(本欄2007年12月18日付け投稿463号拙稿)で指摘したように、現実には、「ASEAN+3」13カ国の中でまともな民主主義国は日本と韓国の2カ国ぐらいのものであり、民主主義の強調は、中国だけでなくほとんどすべての構成国を牽制することになってしまうということに留意すべきである。すなわち、「ASEAN+3」の場で、現時点で我が国が民主主義を強調するとすれば、それは「われわれはあなた方とは違うのだ」ということをわざわざ言いに行くようなものである。アジア地域統合推進のための会議で、こうした発言を繰り返すことは、外交政策上如何にもまずいのではないだろうか。
結局のところ、我が国がこうした姿勢を平気で取ってしまうのは、アジア地域統合の日本にとっての必要性を正しく理解してないからにほかならない。2005年、東アジア・サミットの創設のとき、2002年11月の「東アジア・スタディ・グループ」(EASG)最終報告書の合意を反故にして、日本政府が参加国の拡大提案をしてしまったのも、こうした無理解からきている。現状の日本政府のアジア地域統合に対する基本姿勢は、長期的に見て日本の国益に適っているとは、私にはどうしても思えないのである。
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