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2008-01-18 00:00
最近の東アジアの動向と日中関係
石垣泰司
東海大学法科大学院非常勤教授
東アジア共同体構築へ向けての各国の取り組みの中で、ASEAN10カ国においてはASEAN憲章の署名、ASEAN共同体の2015年実現方針の確認等の前向きの動きがみられる一方、他のプラス3ないし6である日中韓3カ国およびインド、豪州といった東アジアサミット参加国相互間の関係についても、頻繁な首脳交流や特使派遣等具体的動きがみられ、以前より顕著な積極的要素が看取されることに勇気づけられる。
すなわち、日中関係については昨年末の福田総理の訪中が近来にない中国側の熱烈歓迎もあり少なくも外見的には大成功を収めた。また一昨年の胡錦涛主席の訪印に引き続く最近のシン・インド首相の訪中も報道による限り非常な成功裡に終わり、中印関係はかつてない友好的な関係に発展したとされる。また、豪州に昨年末誕生したラッド新政権は、アジア重視の政策の方向性を示唆し、とくに同首相の経歴等から中国への好意的姿勢も取りざたされている。しかし、このような最近の東アジア地域の全般的に好ましい動きは、中国のイニシャテイブに起因するところが大きく、従って逆に言えば、中国側の考え次第では、いかようにも変わりうることをも意味する。しかも、さらに報道によれば、1月14日中国の胡錦濤主席の特使として訪韓した王毅外務次官は、韓国の李明博次期大統領との会談の中で、韓国次期政権の外交政策について「対米関係の回復や対日関係の改善に数多く言及しているが、中国との関係をおろそかにするわけではない、という言葉を直接聞きたい」と中国重視政策をとるよう迫ったという。
このように見てくると、東アジアにみられる積極的要素も依然かなりの脆弱性をはらむものであり、中国側の覇権的姿勢すら見え隠れしている。日中韓3国関係の真の発展・強化のためには、日本および韓国等の主体的取り組みによる働きかけが必要である。韓国次期大統領は主要国への特使派遣等すでに素早い動きをみせているが、まずは、中国が東シナ海ガス田開発、気候温暖化、日本の安保理常任理事国入り等重要問題について、従来の立場から踏み込んだ、おのれの痛みをともなう妥協的精神に基づく誠意を示す必要があろう。日本の安保理常任理事国入り問題については、先般の福田総理の訪中に際し、福田総理から温家宝首相に対し理解を強く求めたのに対し、中国側は一見前向きだが、抽象的でノンコミッタルな態度を示すにとどまったが、中国側はインドのシン首相に対してはインドの安保理常任理事国入りを是認する明確な態度を示したといわれる。
わが国としても中国との関係強化に向けての一層の努力が求められる。わが国の現下の国内的、政治的、経済的基盤力は決して盤石の状況下にはないが、胡錦涛主席の今春の訪日に向けて両国が難航中の東シナ海ガス田開発問題について、双方にとり受け入れ可能な共同開発方式についての合意を見出しうるかどうか、また日本の常任理事国入りについても中国側が肯定的対応を示しうるか、が今後の両国関係にとりとくに重要であり、もしこれら問題について進展がみられない場合には、東アジア共同体に向けた両国の協力についての進展も覚束ないものとなろう。
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