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2008-01-10 00:00
福田首相は「台湾カード」を有効に使ったのか?
大江志伸
読売新聞論説委員
日本人の親台湾感情は、判官贔屓に通じるものがある。とりわけ親日的な本省人(台湾出身者)に対する親近感は、「同志愛」に近い。この特殊な「同志愛」が、日本外交の重荷となることもある。「日米同盟とアジア外交の共鳴」を外交理念に掲げる福田首相が07年の年の瀬に訪中した。胡錦濤国家主席、温家宝首相との首脳会談では、台湾問題が大きな焦点となった。台湾の陳水扁総統は、3月22日の総統選と抱き合わせの形で、「台湾名義での国連加盟申請」の賛否を問う住民投票を行うことを決めている。中国は住民投票を「台湾独立につながる」として強く警戒し、台湾に影響力を持つ主要国首脳に住民投票反対を表明させ、台湾独立派への「包囲網」構築を進めてきた。米国は台北に事実上の特使を派遣して「反対」を伝えただけでなく、ライス国務長官自身が「挑発的行動だ」と批判した。サルコジ仏大統領は「正当化できない」と断じた。ロシア、韓国やシンガポールなどの東南アジア諸国もそろって反対を表明している。近隣主要国で「反対」を明確に表明していないのは日本一国だけ、という状況下での福田訪中だったのである。
首脳会談後に温家宝首相とともに臨んだ記者会見で、福田首相は「台湾問題」について、「我が国の台湾に関する立場は日中共同声明にある通りで、何ら変更していない。二つの中国という立場はとっていないし、台湾の独立も支持していない。平和的解決を望んでおり、対話の早期再開を希望している。一方的な現状変更の試みは支持できない。台湾の公民投票をめぐって両岸に緊張が高まることは望んでいない」と発言した。
福田発言に対する反応は様々だった。中国国営新華社通信は「福田首相はノーという姿勢を語った」と速報した。台湾外交部は「国連加盟は台湾人の願いであり、住民投票は民主的なプロセス。住民投票は台湾海峡の現状を変えるものではなく、日本や国際社会は台湾人の知恵を信じて欲しい」との声明を出した。日本外務省の佐々江賢一郎アジア大洋州局長は「『支持しない』と『反対』はニュアンスが異なる。強度に違いがあることは日本人なら理解できるだろう」と記者団に説明し、「反対」の米仏などとは一線を画したことを強調した。そのためか、日本メディアの中で飛び抜けて親台湾の産経新聞も、「日本の首相として最低限のラインは守った」と評価した。
三者三様の評価といえる。今回の福田発言は、(1)これまでより踏み込む発言で中国への手土産とする、(2)陳水扁政権など台湾側の対日感情を悪化させない、(3)日本国内の親台派を刺激しない、の「三兎」を追った結果、その政治的意味合いは曖昧模糊となってしまった。筆者は「台湾カード」を積極的に活用すべし、との立場だ。住民投票にまつわる「台湾カード」の賞味期限は、投票日の3月22日までである。住民投票に対しては、野党・国民党だけでなく、李登輝前総統も厳しい批判を浴びせている。福田首相は、「支持しない」ではなく、「反対」の立場を明確に打ち出すべきではなかったのか。読者諸兄のご意見をうかがいたい。
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