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2007-12-26 00:00
政府系ファンドの動向と近代国家の役割
櫻田淳
東洋学園大学准教授
サブプライム・モーゲージ(信用度の低い借り手向け住宅ローン)の焦げ付きに端を発した世界金融不安が浮上する中、注目を集めているのは、政府系ファンド(SWF)である。たとえば米国金融大手の一つであるシティ・グループには、UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビ投資庁(ADIA)から75億ドルの出資が行われると発表されている。中国の外貨準備の一部を運用する中国投資有限責任公司は、モルガン・スタンレーに50億ドルの出資を行なうことになった。シンガポールの政府系ファンドは、メリルリンチに50億ドルの出資を行なうと伝えられる。特に2000年以降、中国やロシアは経済発展の結果、中東諸国は原油価格の急騰の結果、それぞれ莫大な「富」を手にするに至った。こうした新興諸国からの資金還流の経路は、主要先進諸国に向けて開かれようとしているのである。
「冷戦の終結」以後、「グローバリゼーション」の趨勢が加速する中で盛んに語られたのは、近代国家という枠組の持つ比重が次第に落ちていくであろうという展望であった。確かに、金融資本主義の世界に典型的に示されるように、一つの国における一つの企業の経営悪化は、それがメジャーな企業であればあるほど、世界に「国境を越えた不安」を広めることになる。しかし、その一方で、「グローバリゼーション」の進展に伴う混乱を沈静させる役割を示しているのが、政府系ファンド、即ち近代国家なのである。
このように考えれば、政府系ファンドの動向は、近代国家という枠組の影響力や耐性を占う上で注目に値しよう。国際政治を観察することは、年々、複雑な作業になっているのは、間違いないようである。
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