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2007-12-21 00:00
2008年中国経済は波乱の幕開けか
大江志伸
読売新聞論説委員
中国経済に変調の兆しが出ている。台湾総統選挙や北京五輪といった重大課題の続く2008年は、急成長を遂げてきた中国経済の岐路となる可能性が高まっている。中国の胡錦濤指導部は12月上旬、共産党と政府が合同で新年の経済運営政策を話し合う中央経済工作会議を招集した。会議そのものは年末恒例のもので、詳しい協議内容は一定の時日を置いて発表するケースが多い。しかし、今年は閉幕と同時に胡錦濤総書記の重要講話と詳しい決定内容が、新華社を通じ速報された。これは中国指導部が08年に危機感を募らせている証左だろう。制御の効かない経済の過熱化と物価急騰の顕在化、この二つが危機の主な要因だ。先の中央経済工作会議は、08年の経済政策方針として二つの危機に対応する「二つの防止」を決めた。「速すぎる経済成長が過熱に転じるのを防ぐ」「物価の構造的上昇が明らかなインフレに転化するのを防ぐ」である。
各種の経済指標から「危機」の中身を見てみよう。まずは「経済の過熱化」――07年の経済成長率は11.6%と5年連続の2けた成長となるのは確実だ。過熱の元凶となっているのが、カネ余り現象である。上海市場の株価は過去2年で6倍に急騰した。07年の固定資産投資は前年比25.6%の大幅増の見込みで、中国社会科学院の試算では08年も同水準で推移しそうだ。固定資産投資と連動して不動産価格が急騰している。10月の主要70都市の不動産価格は前年同月比9.5%増と過去最大の上げ幅となった。同月の銀行による不動産担保融資残高も17.7%増とこれも過去最大の上げ幅を記録した。
中国政府は経済の過熱化を放置していたわけではない。07年になって、金利引き上げは5回、預金準備率は9回も引き上げた。カネ余りの元凶である異常に低い人民元レートを是正するため、元高誘導に努め、年初来5%超の元高となった。資金の海外投資も後押しした。しかし、巨額の貿易黒字は増加の一途で、外貨準備高は1兆5000億ドルに迫ろうとしている。その副作用として見過ごせなくなってきたのが、インフレ圧力である。07年の中国の物価動向を振り返ってみよう。前年同月比の物価上昇率は3月、3.3%と警戒ラインの3%を超えた。8月以降の物価上昇率は毎月6%を超え、11年ぶりの物価高となっている。しかも、庶民生活を直撃する食料品の値上がりが17%超とひどい。
中国経済は、改革開放政策の導入後、3度のインフレを経験している。初回が1980年の7.5%である。この時は「北京の春」と形容された政治動揺が表面化した。次が1988―89年で物価は18%上昇し、天安門事件が起きた。3番目の1993―95年のインフレは、一時20%を突破したものの、当時の剛腕宰相・朱鎔基首相が力ずくで政治動乱を押さえ込んだ。来たる年明け後も、過熱経済とインフレが進行し、サブプライム・ローンに揺れる世界経済が失速すれば、中国経済のバブル崩壊もないとは言えない。まさに岐路である。
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