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2007-12-18 00:00
アジア統合と民主主義
山下英次
大阪市立大学大学院教授
アジア地域統合について議論する際、共通の価値として民主主義をやかましく言う日本人が多い。しかし、それは余りにもアジアの現実とかけ離れており、民主主義をやかましく言うことは、事実上、アジア統合を推進しないでよいと言っているようなものである。
「ASEAN+3」13カ国の中で、現実に民主主義が十分に機能している国は、日本と韓国の2カ国だけではないだろうか。絵に描いたような軍事独裁政権のミャンマーは論外であるが、ASEAN諸国の中で最も経済の発展段階の高いシンガポールでも、ごく一握りの人たちが国のすべての権力を掌握しており、しばしば”kitchen cabinet”(「私設顧問団」)と揶揄されるような権威主義的体制である。シンガポールに次いで経済の発展段階の高いマレーシアも、半権威主義的な体制といってよいであろう。また、シンガポール、マレーシア両国ともマス・メディアの自由はない。フィリピンとインドネシアにおいては、マス・メディアの自由はあるが、全体として民主主義が十分機能しているとは言い難い。タイでは、軍事クーデターが起こり、いま暫定政権下にある。このように、ASEANの中核である5カ国においてもこのような状態であり、ASEAN10カ国の中で、まともな民主主義国は皆無といってよいであろう。
欧州統合では、コペンハーゲン基準により民主主義と人権の尊重が守られていない国は、EUに参加できないが、アジアにおいては、現時点ではこのような参加基準を設けることは到底できない。一般に、欧州とアジアの違いを指摘し、アジア地域統合は難しいとする向きがあるが、これについては、日本を含むアジアの人は、欧州の多様性を過小評価していると言えるであろう。すなわち、アジアと欧州の全般的な違いを過剰に主張するきらいがあるが、欧州もかなり多様なのであり、これは慎むべきであると私は考える。しかし、民主主義という点においては、アジアとヨーロッパにおいて、大きく異なることは間違いない。しかし、だからといって、アジアの多くの国々において、民主主義が実現するまでアジア統合の推進を待つというわけにはいかないのである。
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