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2007-12-17 00:00
本格的な中国人観光時代の幕開けの前に
成田弘成
桜花学園大学教授
最近の新聞報道(「米国が中国国民観光目的国に」人民網日本語版2007年12月12日付)によれば、アメリカへの中国人団体旅行が来年にも可能となるようである。もし本当に実現すれば、本格的な中国人観光時代の幕開けとなろう。すでに多くの中国人観光客が中国国内だけではなく、アジアを中心に海外旅行に押し寄せつつある。ただし、まだ多くの国への中国人の個人旅行は認められていない。しかし、団体旅行に限定されるにせよ、量的に多い中国人観光客は観光産業界の中心的なターゲットとなりつつあり、中国経済が今後も安定した成長を保つ限り、旅行好きな中国人は、21世紀、アメリカ人に代わって観光の主役となろう。
東アジア共同体の議論の中で、人的交流も重要な課題の一つになっていると思う。しかしながら、日本にとっての中国人は、今まで、「手軽なお客」に過ぎないように感じられる。日本が観光立国への道をはっきり明示した時、急に小金持ちになった中国人観光客がそのターゲットになった。例えば、愛知万博における目標の入場者数を確保するために、日本への中国人団体旅行の入国制限を大幅に緩和したことは記憶に新しい。経済利益優先の考え方から中国人旅行者の個人旅行も容認すれば良いとする議論も生まれるが、中国人旅行者の「素行」の問題が一つの大きな障害となって、その議論は本流とはなり得ていない。日本における不法移民や外国人犯罪の多くは、中国人が問題とされているからである。この「手軽」だが「厄介」な中国人観光客とどのように向き合えば良いのか、本格的な中国人観光時代の幕開けの前に、日本はまだ迷っているように思われる。
すでに中国人の受入れ問題については多くの研究が個別に進行していると思うが、「人的交流の自由化」を促進する為には、出来るだけ早い時期に、観光のみならず移民労働者の受け入れを含めた統合的な政策プラン(長期目標)を打ち出すべきではないだろうか。東アジア共同体の議論の意義は、将来の地域ビジョンについて、参加国が意見を自由に交換しえるところに、その本質的な価値がある。少なくとも皆が議論に希望を持てている間に、人的交流のための有意義な目標を定める必要がある。いっそ21世紀生まれの東アジアの子供たちには、一定の教育水準にあれば、自由な旅行と安定した職の提供を約束できるような制度作りを提案してはどうだろうか。
新しい年の訪れをひかえ、少し楽観的な夢を語ることになってしまったが、福田首相の訪中の際には、機を逃さずに将来の政策目標を話し合ってほしい。環境問題ほどでないにしても、人的交流の枠組み作りでも実際の数値目標が議論されるべき時が来ているように思われる。
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