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2007-12-14 00:00
連載投稿(2)マレーシアの達成と東アジアの将来像
首藤もと子
筑波大学教授
マレーシアでは、通貨危機の最中にアンワル・イブラヒム蔵相(当時)を標的にしたマレー人政治エリートの抗争が表面化したが、それは現政権が成立した2003年までには鎮静化した。翌年の総選挙で、統一マレー国民組織(UMNO)を中核とする与党連合は下院219議席のうち199議席を獲得して、圧倒的な安定勢力を保持している。経済的には80年代の工業化の成功に続いて、90年代以降はIT先進国化に向けた長期戦略を実施している。経済成長の結果、一人あたりGDP(12,700ドル強)は、東アジアのなかで日本、シンガポール、韓国に次いで高く、ASEAN諸国のなかでは、シンガポールに次いで格段に高い経済水準にある。これは、50年前の独立当初、一次産品生産国で人口の半数強が貧困ライン以下で生活していた状況と比べると、大きな変貌である。しかも、世界のイスラム金融市場は1兆ドルに達しており、今後さらに数倍の膨張が見込まれていて、マレーシアはイスラム金融市場の中核のひとつとなっている。
しかし、さらに重要な達成は、1969年5月の暴動以降、暴力的な民族対立が一度も起きていないことである。人口の6割弱がマレー系、3割が華人系、1割がインド系という複合民族社会であるマレーシアが社会統合に成功してきた要因のうち、民族問題を抱える多くのアジア諸国に政策的に参考となる方法はないのだろうか。また東アジア共同体の制度設計に向けて、有益な示唆はないだろうか。インドネシアやパキスタンは、マレーシアよりほぼ10年早く独立したが、民族横断的な国民統合は、依然として困難な課題である。マレーシアの成功例は、国家による積極的な市場介入、多数派への優遇政策と厳しい社会統制等の固有の要因のみによるものであり、そこから普遍性を見出すことは困難なのだろうか。
この意識調査結果について、私がそのようなことを、アジア諸国からの留学生が大半を占める授業で話したところ、彼らは興味深そうにその数値に見入っていた。すぐに、留学生の2名がほぼ同時に手を上げて質問した。「しかし、『選挙は自由で公正に実施されていると思うか』という質問に、日本での回答率が50%であることは、どう解釈したらよいのですか」。(おわり)
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