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2007-11-20 00:00
「対米説得力」という能力
櫻田淳
東洋学園大学准教授
先刻の日米首脳会談に際して、福田康夫総理が米国政府に「拉致」案件に関連して「対北朝鮮テロ支援国家指定の維持」を強く迫らなかったとして批判する声があるようである。厳然たる事実を指摘すれば、こうした案件では、現在の日本は、強い対米要求を出すことはできない。というのも、現時点での日本の「対米説得力」を測れば、「直近の最低値」を付けているのは、間違いないからである。
国内政局の都合によってインド洋上からも手を引いた日本は、対米同盟の文脈では「やることをやっていない」状態に等しい。普天間基地移転に絡む議論も、全然進展していない。その一方で、野党第一党党首が「どうせブッシュなど米国国内でも支持されていない」と発言したことは、AFP通信によって既に海外に伝えられている。当然、その発言は米国政府関係者の耳に入っていることであろう。政府・与党は「結果を出さない」、野党は「反米気分に漬かる」というのでは、米国政府が本気になって日本の「拉致」案件に対する要求を聞く気になるかは、率直に疑問である。
そもそも、拉致案件未解決を事由にした対北朝鮮テロ支援国家指定の維持によって、米国が得られる利益は何であろうか。本来、米国の対北朝鮮テロ支援国家指定は、「よど号」ハイジャック犯隠匿を事由としたものであり、「拉致」案件云々とは直接に関連がない。米国にとっては「指定維持」によって得られる利益は、「一部の日本国民の満足」である。片や、「指定解除」によって得られる利益は、短期的には北朝鮮の懐柔であり、長期的には朝鮮半島「非核化」を通じた安定の実現である。このことは、日本にも直接の利益を及ぼすものである故に、日本は現下の米国の対朝「宥和」姿勢を黙認せざるを得ない。これが、日本における「対米説得力」の低下の帰結である。
野党にも、「拉致」案件に熱心に取り組んでいる人々は多いかもしれないけれども、彼らは、自らの「給油」活動への反対姿勢が、どれだけ対米説得力を削ぎ落としているかに気付いているであろうか。その意味では、インド洋「給油活動」案件と北朝鮮「拉致」案件は、一つの線でつながっているのである。
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