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2007-11-13 00:00
連載投稿(2)民主化支援に立ち後れるわが国
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
わが国の民主化を考えると、過去140年間の近代化過程で、明治時代の民権思想・運動や1910年代後半から20年代前半の大正デモクラシーの経験を経て、第2次世界大戦後の占領時代に法的、制度的に確立された。しかし、その実態を見ると、生命の尊厳、人権保障、平和憲法をはじめ、三権分立、選挙権を有する国民による国会・地方議会議員・地方自治体首長の選挙、最高裁判所裁判官の審判、法の下での平等、言論の自由、集会・信仰の自由の保障等々が確保されているにも拘らず、まだまだ改善の余地が大きい。とは言え、開発途上国一般に対比すると、わが国国民の民主主義を守る意識は高く、言論の自由、集会の自由をはじめとする民主主義諸制度もかなり定着したといえるであろう。
しからば、開発途上国へのわが国の民主化支援活動はと問うと、その歴史は甚だ短いだけなく、大変残念ながらその内容も乏しい。それは、わが国外務省が、外国の内政に干渉はしないということを、長年にわたってその外交政策の基本としてきたからであり、途上国の民主化支援は、途上国への内政干渉とみなしてきたからである。しかし、今日のグローバリゼーションは経済面だけでなく、文化面、政治面にも及んでおり、外国における人権侵害、国内紛争、麻薬取引、環境破壊も自国への影響を重視し、地球的課題として対処する姿勢が優勢となってきた。その結果、国際連合安全保障理事会は、国際秩序の維持という観点から内政への介入を承認する方向へ、その基本方針を転換したといえるであろう。かつての南アフリカ共和国におけるアパルトヘイトは、人権侵害という理由で、国連加盟国の経済制裁を正当化したが、その後ユーゴスラビア各地域での紛争に伴う人権侵害は、北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入を招き、東チモールでの人権侵害は、豪州の軍事的介入を人道的支援として承認することになり、さらにアフガニスタンでのタリバン勢力による国内紛争に基づく人権侵害は、多国籍軍の介入をもたらし、今日に至っている。
我が国も、1992年の政府開発援助(ODA)大綱で途上国の民主化促進を市場経済化支援と同様に重要目標としてきた。しかし、ここ10余年の実態をみると、民主化支援は限定的な形でしか実行されていない。一部の途上国で憲法・法律体系の整備や司法制度の確立、放送局の整備、放送プログラムの支援、ジェンダー政策や女性センターの支援等はしているものの、野党を含めた政党の育成・支援、民主的選挙制度の確立や立法府の強化、民主主義教育・遵法意識の強化、民主的軍隊の強化、独立メデイアの育成、政治家・官僚汚職・腐敗防止体制の強化、民主化推進NGOの育成等、いわゆる民主化支援の中核となる支援はほとんど実施されていないのが現状である。それゆえ、主要先進諸国の中で唯一国家レベルでの民主化支援基金をもたない我が国において、他の先進諸国に見るような議会の主導による民主化支援基金の創立が不可欠である。しかし、2003年以来のADP(民主化・平和構築支援)議員の会を中心とした一部国会議員による努力にも拘らず、大変残念ながらその成果を得るに至っていない。(つづく)
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