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2007-10-30 00:00
連載投稿(4)求められる経済発展と民主化の並行的進展
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
中国、ベトナム、ラオスのみならず、複数政党政治下にあるバングラデッシュ、インド、インドネシア、フィリピン、タイ等でも、経済成長の下で都市・農村間格差が拡大し、急速な都市化がみられる中で、職を求めて都市へ出稼ぎ・移住してきた貧困農民たちが失業者・不完全就業者として都市に堆積している。そして貧民窟が拡大の一途をたどっている。都市型犯罪も頻繁化し、工業化やモータリゼーションの下で、道路は渋滞し、排気ガスによる大気汚染、水質汚濁、さらには住民の急増に追いつかない電力供給、上下水道等インフラの未整備による都市環境の悪化が急速に進んでいる。
農村の疲弊化の下で農村の生態系環境も悪化している。このような現状の中で、政府や多国籍企業のトップは、いつも経済成長、工業化に不可欠なインフラ整備の必要性は声高に訴えているが、国民大衆、特に貧民層の日常生活に不可欠な生活環境の整備や国内・地球環境問題に対する政府、経営者の取り組みは断然足らないのがアジア諸国の現実である。このような深刻な課題がなぜ放置ないしその解決が後回しにされてきたのかと問うと、そこにはかって欧米諸国、日本や韓国がたどった開発政策の現代アジア版が見えてくる。すなわち、これらアジアの途上国は、経済発展の初期段階では、高度経済成長、工業化を通じた産業構造の高度化・近代化を優先し、所得格差の拡大、環境破壊を続け、同時に国民の人権、健康、生活環境、福祉の改善を無視ないし軽視してきた歴史があり、その政治体制の如何を問わず、この開発政策を踏襲してきたということである。
しかし、21世紀の今日では、世界は19世紀、20世紀の世界とは異なり、途上国でも国民大衆の教育水準が高まり、女性・こども・少数民族の権利に目覚め、先進国からのデモンストレーション効果、国連をはじめとする国際機関や国内外のNGOの圧力もあって、途上国政府も国内で拡大する所得格差や深刻化する環境破壊に眼を閉じることはできない状況にある。途上国でも、これらの国民大衆に直結する課題に対して、もはや国家権力がその解決を故意に遅らせたり、封じ込めたりすることはできない状況になっている。さらには、それらの問題解決のための政策決定・実施・監察過程への国民参加という、政治改革への要求が高まっている。経済発展が民主化に先行するということは、現代社会でもみられているが、今後はますます両者の並行的進展を要求する市民社会の目覚めが顕著となるであろう。(おわり)
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