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2007-10-26 00:00
連載投稿(2)胡錦濤の「大権確立」と「準院政」の制度化
大江志伸
読売新聞論説委員
今回の指導部人事の焦点は3つあった。第一は、実力者曽慶紅の去就問題。「胡錦濤は曽慶紅留任を望んだものの、江沢民の圧力で引退させられた」「いや引退は曽慶紅自身の意思だった」など諸説紛々だが、政権中枢にあって唯一、胡錦濤に対抗できた実力者が去った、という事実はなにより重要である。第二は、江沢民の影響力の有無、強弱である。政治局常務委員には、上海閥の呉邦国、賈慶林、李長春が留任した。とくに後者2人は汚職、失政がらみで早くから退任説が出ていた。それでも残留できたのは、やはり江沢民らの「介入」があったからだろうが、ここでより重要なのは、上記、上海閥3人組は5年後の党大会では定年に達して消えるという「確実性」である。当面の妥協も5年後の「完全勝利」をにらんでのことだ。常務委員9人の「1強8弱」体制は確固となった。
第三は、後継布陣である。胡錦濤は自身の出身母体である共産主義青年団人脈である李克強を後継者にしたかったが、江沢民が太子党の習近平を強く推したために、習が序列上位の常務委員となった、とされている。近年にないトップ人事をめぐる情報の錯綜ぶりから見て、相当の駆け引きが展開されたのは事実だろう。その点、第三については「完全勝利」とはいえない。だが、ここでも視点を変えれば、胡錦濤の「譲歩」「敗北」とはならないのである。
今回の人事抗争の構図は、胡錦濤を中心とする共産主義青年団グループ、江沢民が率いる上海グループ、そして曽慶紅に代表される太子党グループという三つ巴の図式が強調されがちだが、実態は違う。第一、第二の焦点から浮かび上がるのは、党内で圧倒的な権威を確立し大権掌握へと進む胡錦濤を、党内の旧勢力や他のグループがどこまでけん制できるか、というのが基本構図だった。江沢民の「影響力」も、胡錦濤に正面から対抗するといった性格のものではなかった。胡錦濤と共産主義青年団派の「突出」をけん制しようとする党内力学が、なお賞味期限の残る「江沢民」をツールとして利用しただけ、というのが私の見方だ。その証拠に、けん制勢力には司令塔も核心グループも存在しない。繰り返しになるが、党内のさまざまな意見、人脈、空気に配慮したバランス人事を今回受け入れたのは、胡錦濤が5年後の「完全勝利」を確信しているからだ。
では、胡錦濤の「完全勝利」は中国の今後の政治体制にどんな影響を及ぼすのだろうか。胡錦濤の「大権確立」は、胡錦濤への政権移譲後も影響力行使に固執した江沢民スタイルに通じる。つまり、前任者による「準院政」の制度化につながる。意図したものかどうかにかかわらず、「準院政」システムは体制の安定的継承にプラスとなる反面、前政権からのドラスティックな政策転換には大きな制約となる。中国の将来展望を左右する重要な問題となってくるだろう。(おわり)
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