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2007-10-19 00:00
始まった北東アジアの安全保障対話
武貞秀士
防衛省防衛研究所統括研究官
韓国の極東問題研究所(所長は、金大中政権下で統一省長官をつとめた、康仁徳・博士)が、3年間にわたり「日中韓の安全保障対話プロジェクト」を実施してきた。10月中旬、その成果を発表する会議が、ソウル市内のホテルで行われた。「日本、韓国、中国の各国が、北東アジアで安保分野の信頼醸成を進めてゆくため、さまざまな問題について、どのような認識の違いがあり、安保分野での協力が実質的には進んでいない原因は何か。歴史、経済、安全保障、北朝鮮の各分野で、各国有識者の認識はどう違うか」ということを明らかにするために、日中韓の各国から30名ずつの有識者を選んで、アンケートをとり、分析をしたプロジェクトである。
それによると、日本、中国、韓国の専門家の見方の違いがはっきりと表れている。例えば、この地域で多国間の安全保障協力を進めるとき、米国の役割が大きいと考え、最初から正式メンバーとして考えるのは、日本の有識者である。中国はあまり米国の役割を重視してはいない。韓国はその中間である。北朝鮮の核問題については、日本は北朝鮮との対話に最初からあまり期待していない。中国と韓国は核問題解決に楽観的である。
日中韓の違いは、6か国協議についても表れた。北京で6カ国協議が始まり、北朝鮮核問題解決のために、各国が努力し、2007年1月以降、米国と北朝鮮の2国間協議が進んで、6か国の合意が2月に成立した。10月には南北首脳会談が開催された。このプロセスを見て、米朝協議、6ヵ国協議、南北協力の3つが絡み合い、北東アジアの信頼醸成が進んでいると見るのは、韓国の専門家である。中国は南北協力が先行するかたちで、軍事問題で休戦協定の当事国である中国が疎外され始めていると不安になりはじめている。休戦協定のもうひとつの当事者は米国である。10月4日の南北宣言のなかの「3者、あるいは4者」の解釈をめぐり、新たな火種が生じたことを心配するのは日本の有識者である。
北東アジアの安保対話は問題山積ではあるが、このようなプロジェクトの成果により、日中韓の専門家が集まり、自由にこの地域の安全保障問題を議論する雰囲気が生まれつつあることを教えてくれた。
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