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2007-10-12 00:00
「日本製品」ではなく「日本人」をブランド化せよ
成田弘成
桜花学園大学教授
北京への訪問は、3年前から定期的に行い、その期間にも北京の生活の変化は著しいものがあると感じる。今年の夏も北京で合計3週間を過ごし、中国人庶民の生活の視点から「東アジア共同体」の可能性について考えてみた。
既に日本のNHKのドキュメンタリー番組でも、「伊利対蒙牛」の企業戦争として紹介されたが、庶民のスーパーマーケットには牛乳が、そしてより最近ではヨーグルトが大量に販売されるようになって、北京人の食卓にも大きな変化が表れている。これを豊かさの兆しと理解できるかどうかは分からないが、庶民の足としての地下鉄やバスにも、外国人旅行者を意識してか、良いマナーを心がけるようにメッセージが流され、我先に席を奪い合う中国人にも、たとえ日本人と分かっていても、年長者に席を譲る余裕が最近生まれているように思われる。
問題は、彼らの価値観の形成にあるかも知れない。路上において1つのテレビをみんなで囲んで見ている庶民の生活レベルは、50年前の日本と同じであるが、チャンネル数が多いだけ、価値観の分化を促しているように見える。しかし、日本のNHKにあたる「中央電視台(CCTV)」の第1チャンネルは、全国放送だけに人々に影響を与え、そのプログラムには特別の注意を要すると思われた。8月には、残念ながら、そのチャンネルで、抗日キャンペーンを目的とした第二次世界大戦下の日中戦争ドラマが長時間放映されていて、悪者としての日本人をアッピールしていた。
同時にその頃、1980年代の作品ではあるが、国民的人気の「西遊記」も放映され、人々の心を和ませていた。西遊記は、中国四大古典文学の1つに数えられ、この「西遊記」の主人公孫悟空を演じた六小齢童は、猿役者として絶大な人気と尊敬を集めている(中国四大古典文学は、中高等教育では教科書として使用されている)。従って、最近の日本版「西遊記」に対して、中国からのクレームがあったことには納得できる部分もある。
文化に高低はないものの、自国の文化に誇りを持つことは大事なことであり、他国から尊敬される文化を持つことも必要である。日本の漫画を中心としたポップカルチャー売り込み戦略が一時的には効果的であっても、日本文化への尊敬が生まれなければ、狡猾な日本人のイメージを消し去ることは出来ない。経済力だけでは、今後「東アジア共同体」に向けた対等な対話も生まれないだろう。日本企業は「日本製品」をブランド化することに既に成功しているが、日本政府は「日本人」をブランド化する必要があることを常に忘れるべきではないだろう。
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