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2007-10-11 00:00
連載投稿(8)「地球環境基金(GEF)」を再編成せよ
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
「新世紀開発目標」の達成と低炭素社会の実現を両立させる上での最大の問題は、途上国側と先進国側の両者に存在する。いずれの国でも、その問題は2つに帰結する。一つは、目標達成にその時々に動員できる国内資源には制約があるということ、もう一つは、その結果複数ある開発目標のどれを優先するか、どれが最も緊急度が高いか、という課題である。もちろん、経済・技術・社会発展水準、生態的状況や政治的成熟度が異なる国家間では、資源制約の度合いで総体的のみならず、資源間でも差異があるし、優先度の選択にも目標間だけでなく、動員できる目標達成手段間でも差異があるし、もちろん緊急度にも差異がある。
途上国では、「環境の持続性の確保」は7つある「新世紀開発目標」の第7目標であるが、第1目標から第6目標までの個別目標の達成も同様に重要である。限られた国内の人的・技術的・行政的・資金的資源をどの目標に優先的に配分するかの課題である。もちろん、これらの「新世紀開発目標」は、相互に連携し、その根底には因果関係があるが故に、相互間には代替性だけでなく、補完性もあり、一つの目標達成が他の目標達成に貢献することは自明である。例えば、第1目標である貧困・貧困人口の半減は、他のすべての目標達成に貢献することは疑いない。特に、多くの途上国では、貧困が熱帯雨林の破壊、都市への人口集中等環境破壊の一つの大きな原因であるが故に、貧困削減は農村、都市いずれにおいても環境保全に役立つ。
しかし「環境の持続性の確保」という第7目標の達成が、普遍的初等教育の達成という第2目標やジェンダー平等の推進と女性の地位向上という第3目標の達成にどの程度の効果があるかということになると未知数が多い。その反面、第2目標や第3目標の達成が、第7目標の達成に貢献するであろうことは容易に推測できる。けだし、低炭素社会や環境持続性の確保の重要性の認識とその実現には、当該社会における人々の教育水準や教育普及度と女性の意識・地位向上が大きな役割を果たすと実証されているからである。
こうして、経済的・人的・技術的・行政的資源の制約が厳しい開発途上国では「新世紀開発目標」のうち第1、第2、第3目標のほうが、第7目標よりも政府の優先度は高くなっているのが現状である。このような状況の下では、途上国政府の開発政策を優先し、その主体性を尊重するという世界的な合意に基づく「21世紀の新しい国際協力体制」での先進諸国の対途上国支援も、貧困削減、基礎教育の普及、女性の地位向上等が、健康保全と並んで優先されることは仕方がない。しかし「環境の持続性の確保」、その一環としての低炭素社会の実現が、途上国の環境保全のみならず、世界全体にとっての大きな課題である地球温暖化防止のために不可欠であることを認識するならば、先進諸国を含む国際社会は、伝統的な対途上国支援の枠組みを超えて、「地球環境基金(GEF)」を再編成して、世界のすべての国々が何らかの基準で拠出する「地球温暖化防止・低炭素社会実現世界連帯基金」を設立して、国際協力を推進することを21世紀の最大課題とすべきである。(つづく)
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