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2007-10-10 00:00
連載投稿(7)「新世紀開発目標」と途上国
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
世界全体で設定した途上国開発の将来目標である「新世紀開発目標」も、その第7目標に「環境の持続可能性の確保」を掲げており、そこでは、安全な飲料水および基本的な衛生設備を永続的に利用できない人々の割り合の半減と環境資源の喪失の阻止が強く訴えられている。すなわち、環境の持続性を担保する一つの目標である低炭素社会の実現が、持続可能な開発目標となり、「新世紀開発目標」となっているのである。この両者が両立するか、しうるかどうかが問題ではなく、各国内で、さらに国際的に如何に両立させるかが、「新世紀開発宣言」を署名した世界196カ国の指導者に課せられた国際責務である。その両立を達成するためには、多くの障害が存在することは当然であり、それを如何に克服するかが、人類に課せられた課題である。
途上国における低炭素社会の構築では、そのおかれた経済・技術条件から考えて、一般的にクリーンな再生自然エネルギー、クリーンな火力発電と省エネ等の技術移転こそ、最もリープフロッグ(蛙飛び)ができる分野であるが(一部の先進的途上国では原子力発電や燃料電池技術の開発・移転も考えられる)、その場合国内外の民間資金の導入のためにも、当事国の政治的安定、政策の安定、行政の効率、法整備、司法制度の中立性、腐敗の欠如、公正な税制、道路・通信等経済的インフラの整備、労働力市場の整備等が不可欠である。
これらの国内経済・社会・政治体制の整備は、国連総会で採択された8つの「新世紀開発目標」(MDGs)の達成のためにも不可欠である。けだし、MDGsの第1目標である「極度の貧困と飢餓の撲滅」、第2目標である「普遍的初等教育の達成」、第3目標である「ジェンダー平等の推進と女性の地位向上」、第4目標の「乳幼児死亡率の削減」、第5目標の「妊産婦の健康の改善」、第6目標の「HIV/AIDS、マラリア、その他の疾病の蔓延防止」、第7目標の「環境の持続可能性の確保」、第8目標の「開発のためのグローバル・パートナーシップの推進」は、いずれも、一方では途上国の国内体制の広範な改革なくしては達成不可能であり、他方では、国際社会の対途上国協力なくしては不可能である。
特に、1990年の冷戦体制の終結以来、対途上国支援を続けてきた先進諸国では、一方で国民の間に途上国協力への疲れが見えてきたと同時に、他方では、途上国のマクロ政策の不適切性とその実施体制の不備、政治的腐敗・不安定に対して厳しい批判が生まれ、これらの国内改革なくしては、対途上国支援が効果なしという強い意見がいろいろな階層から生まれてきた。近年、国際的テロとの戦い、地球温暖化防止というスローガンの下で、国際開発協力に弾みがでてきたが、いずれの場合でも、途上国の主体的係わりの必要性、特に国内改革の必要性を強く滲ませている。新世紀目標は第1から第7目標まで、すべて途上国の国内的努力に期待しており、第8目標は、これらの途上国の国内努力を前提とした支援であるといってよいであろう。すなわち、途上国の国内経済・社会政策や国内政治体制の改革なくしては、低炭素社会の構築に最適な技術移転、国内外の民間資金の導入さえ不可能ないし困難であり、その結果「新世紀開発目標」の達成も不可能ないし困難となるということである。(つづく)
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