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2007-10-10 00:00
東アジア協力をめぐる議論について
佐藤考一
桜美林大学教授
東アジア協力の是非をめぐる議論が非常に盛んだ。結構なことと思うが、気になることが四つあるので、私見を述べてみたい。まず、東アジア共同体の創設を是とする議論であるが、第一にFTAやEPAを網の目のようにめぐらせればそれだけで、経済効果が出るかのような議論がある。第二に、実態としての東アジアの協力と、「相互の共感と忠誠心を基礎とするEUのような我々意識」に支えられた共同体の理想の間には大きな乖離があることへの意識が薄い。次に、東アジア共同体を非とする議論について、第三に日中間に摩擦が多い現状から協力に消極的であるものが散見される。第四は、地域協力をAPECか、EASか二者択一的にしか見ない議論で、これは東アジア協力を是とする側にも非とする側にもある。
私見をいえば、第一のFTAやEPAは、政府間で作成したものを5~10年かけてその利用率から見て評価し、使われていない部分があれば、その理由が何なのか、例えばAFTAのように税関の官僚のキャパシティ・ビルディングが必要なのか、あるいは協定そのものに問題があるのかを、検討しなければならない。息の長い協力が必要である。第二については、共同体は簡単には出来ない。その場合に、共同体の定義を変えるのではなく、これは地域協力をする店の幟、看板であるぐらいの気持ちで臨むべきだ、ということである。共同体の成否については、未来の世代に委ねればよい。
第三の問題については、体制が異なる中国との付き合いに注意が必要なことはその通りである。だが、中国は隣国である。遠いアメリカと違って、摩擦が多いからといって、付き合わないわけにはいかない。摩擦が多いからこそ、その軽減のために付き合うべきであろう。第四については、アメリカがAPECに、中国がEASに固執し、紛糾している印象があるが、アメリカにアジアへの関心を持続させることの政治的効果と、アメリカ市場を含めた東アジア経済の発展の、双方から必要な形態を柔軟に考えるべきであろう。EASが、APEC総会の際のサブ・コーカスとなることを考えてもよいし、参加の有無は別として、アメリカのためにEASやその閣僚会議に席を与える形でもよいはずである。絶対に避けなければならないのは、東アジア協力が域外諸国を排除する経済ブロックであるという印象を与えることであろう。世界中を相手に貿易をしている現在の日本にとって、これは自殺行為となる。
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