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2007-10-09 00:00
連載投稿(6)途上国による省エネ目標構築への試み
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
途上国で現在省エネ技術の移転・普及に最も大きな役割を果たしているのは民間企業である。特に、途上国で生産・流通活動に従事している先進諸国の多国籍企業は、国際競争で優位に立つためにも省エネ技術や省エネ家電製品・自動車の輸出や省エネ生産工程の導入に奔走しており、結果的に途上国における地球温暖化防止、低炭素社会の構築に役立っている。
東アジアでは、中国をはじめとする途上国政府も省エネ目標作りに本格的に取り組み始めており、今年になってからだけでも、1月に東アジア・サミットの「セブ宣言」、5月に開催されたアジア産消国ラウンド・テーブルの省エネ目標・行動計画の策定、APECエネルギー相会合での省エネ目標・行動計画の策定、検証システムの構築と続き、本年8月23日シンガポールで開催されたアジア太平洋地域16カ国(アセアン10カ国、オーストラリア、中国、韓国、インド、日本、ニュージーランド)エネルギー担当相会議では、各国が2009年夏までに自国で実行可能な省エネの数値目標と行動計画を設定・報告し、そのための国際協力を推進する枠組みを作ることを盛り込んだ共同声明を採択している。
さらに、9月のシドニーにおけるAPEC首脳会合では、2030年までに域内エネルギー効率を、2005年に比して、25%向上させることを合意している。日本自身は、2030年までにエネルギー利用効率を2005年比で30%向上させる省エネ目標を設定している。この構想は、現在GDP単位あたりの二酸化炭素排出量に大幅な格差(日本の1に対して、インド7.7、中国11.2、ロシア18.9)が存在し、省エネ技術の普及で、世界全体の二酸化炭素排出量の約25%の削減が可能であるという国際エネルギー機関(IEA)の試算に基因する。
かくして、途上国における低炭素社会の構築では、一般的にクリーンな再生自然エネルギー、クリーンな火力発電と省エネ等の技術移転こそ、さらに一部の新興途上国では原子力発電や燃料電池技術の開発・移転も途上国がリープフロッグできる分野であるが、そこでは先進諸国をはじめとする国際社会の協力体制に、大きな方向転換と従来以上の格段な量的・質的改善が求められる。従来の国際会議では、途上国が先進諸国と共有する「持続可能な開発目標」や「ミレニアム目標」と低炭素社会構築への道程は、両立し得ないという議論が、多くの途上国代表によって主張されてきた。しかし、一部の東アジア地域の途上国、特に韓国、シンガポールが既にその国家目標にしているように、両者の両立は可能であると考える。
「持続可能な開発」(Sustainable Development)は、1986年に「環境と開発に関する世界委員会」、いわゆるブラントラント委員会が、その報告書「われわれの共通の未来」で発表した概念であるが、環境と両立する開発、環境保全と経済開発のバランスが取れた開発を指す。当初は経済成長・開発なくして環境保全はないという側面が強調されてきたが、近年では「持続性」概念が注目されて、環境保全なくして経済成長・開発の持続性はない、といわれている。(つづく)
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