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2007-10-08 00:00
連載投稿(5)途上国の低炭素社会化に向けて
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
低炭素社会を構築するため、途上国の発展水準によっては、外部資金の導入を必要とする場合もあろう。特に新興途上国に見るように、低炭素社会に不可欠な既存技術の導入は、それが経済性基準に合致すれば、市場を通じて、国内民間資金の動員はもちろんのこと、外部民間資金の導入もさほど困難ではない。
当然ながら、国内外の民間資金の導入には、当事国の政治的安定、政策の安定、行政の効率、法整備、司法制度の中立性、腐敗の欠如、公正な税制、道路・通信等経済的インフラの整備、労働力市場の整備等が求められる。これらの国内条件がそろった途上国は、そうでない途上国に比べるとそれだけ技術移転、国内外民間資金の導入で優位に立つことから、これらの分野で途上国の国内改革が今後推進されることが期待される。このことは、単に途上国におけるGHG排出量の削減ないし安定化に役立つだけでなく、MDGの最も緊急な目標である途上国の貧困削減、政治的安定や、現在急速に拡大している途上国間の経済格差の縮小にも役立つし、南北間経済格差の縮小、国際経済の安定的成長、ひいては国際的テロリズムの撲滅にも貢献すると期待される。
新興途上国を除いては、一般に途上国では、超効率省エネ技術や、ゼロエミッション石炭火力発電や原子力発電技術、固体高分子型燃料電池技術のような新しい技術を国内で開発して、低炭素社会を導入することは困難である。これらの技術開発・普及は基本的に先進諸国からの技術導入に依存せざるを得ないが、最も重要なことは、これらの技術導入・普及を容易にする国内の経済・社会・政治的環境が存在する途上国が限られているのが現状である。特に、これらの導入技術を効率的に利用しうる技術力の欠如、法整備・行政機構の不備、市場条件の未整備が大きな課題である。
さらに、原子力発電技術の導入・普及については、現在ではアルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、インド、韓国、メキシコ、南アフリカ共和国等少数の途上国に限定されている。原子力発電に必要な燃料ウラン、濃縮ウラン処理技術の対途上国技術移転は、核非拡散条約(NPT)が存在する現在の国際社会では、最近の米インド原子力協力協定にみるように、例外的にしか認められない。その場合でも、原子力発電の安全性の確保と使用済み核燃料の適切な処理のためには、国際原子力機関の監視下におかれる。そこで、途上国における低炭素社会の構築では、一般に省エネ技術の導入・普及が最も現実的な選択肢となっている。(つづく)
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