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2007-10-07 00:00
連載投稿(2)第二回南北首脳会談で見る朝鮮半島の近未来図
大江志伸
読売新聞論説委員
「独裁者の死」は、東アジア安全保障を脅かす最大の不確定要素のひとつとなる。後継体制はどうなるのか。うまく機能するのか。金正日氏の死によって北が崩壊すれば、何が起き、周辺各国はどう対応すべきなのか。韓国の太陽政策、米国の性悪説から性善説への戦術的転向、仲介外交の労をとる中国の形式的「性善説」、どれにも、確実に迫りつつある「独裁者の死」という重大要素が底流とになっている。
今回の首脳会談で、金正日氏は、健康不安説を自ら否定して見せたが、2000年時の南北首脳会談の精気に満ちた様子に比べ、体力、気力の衰えは一目瞭然だった。盧大統領が宴席で金正日氏の健康と長寿を祈って乾杯の音頭をとったのは、決して唐突な行動ではない。むしろ、韓国人の大半が潜在意識として持つポスト金正日への不安が行動になって出た、と見るべきだろう。金正日氏が健在なうちに出来るだけ緊張を緩和し、破綻状態の経済を底上げし、暴発を未然に防ぐ体制を築くことが、より確実な安全保障策となるからである。
では、北朝鮮は韓国の「性善説」、米国の「性善説」への戦術的転向、中国伝統の形式的「性善説」にこたえて、自身も「性善説」へと踏み出すのだろうか。答えはノーであろう。なぜなら、北朝鮮自身も「独裁者の死」への対応が内政外交の最大の課題になっているからだ。金正日氏の関心は、現体制維持の一点に尽きる。韓国、米国、中国三者三様とはいえ、その「性善説」包囲に答えて自分も「性善説」に転換した瞬間に相手が「性悪説」に戻れば、体制崩壊は確実との疑念をぬぐえない。最後まで担保として手放せないのが、「核」ということになろう。
しかし、「対決カード」だけで国際社会から譲歩を引き出す瀬戸際戦術の環境は大きく変わった。体制維持に必要なさらなる果実を得るには、「性善説的な対応」も不可避だ。核の完全放棄はないにしても、「首の皮一枚」を残す大胆な譲歩策に出る可能性は排除できない。拉致問題で自らの外交空間を狭めてきた日本が、南北首脳会談の「成果」を過小評価したがる心理は理解できるが、朝鮮半島の近未来図を左右する新潮流を侮ってはなるまい。(おわり)
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