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2007-10-05 00:00
連載投稿(3)「環境と開発の両立」をめざし始めた途上国
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
貧困撲滅、健康・福祉の改善、雇用拡大、国内地域間格差の縮小、国民の生活水準の向上等を今後も最も重要とする途上国では、政府の環境問題への関心は低く、地球温暖化問題への関心は一層低いというのが、従来の状況であった。しかし、1992年の地球サミットと2002年の世界環境開発会議における国際的合意に触発され、さらにもっと重要なことは、一方で急速な経済成長、工業化の進展、都市化の進展によって環境破壊が激化しているアジア、ラテン・アメリカの途上国で、他方では貧困にあえぐサハラ砂漠以南のアフリカ諸国における環境難民の続出によって、何億という一般国民大衆、特に貧困層における健康被害の激増により、環境問題がもはや先進諸国の国内課題だけではなくなってきたことが認識され始めたことである。さらに、地球温暖化の進展は、砂漠化、水不足、天候の激変という生態系の変化を急速にもたらし、途上国でも農業生産の低下、生物多様性の喪失に対する不安が増大してきている。途上国間でも、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国を含む多くの途上国は被害者であるが、一部の途上国はその加害者であることも認識され始めた。
こうして、途上国でも近年では、京都議定書の下での中国をはじめとする諸国でのCDM導入の加速化や海外直接投資企業による省エネ技術や再生可能な自然エネルギーの導入を通じて、一方で経済成長、工業化の高度化を図るとともに、他方では環境保全、地球温暖化防止という「環境と開発の両立」に多大な関心をもつようになってきた。確かに途上国は、地球温暖化が産業革命以降の先進諸国の経済成長、工業化、生活様式の変化に基因する化石燃料の大量消費、それに伴う環境悪化によるという国際舞台における主張を取り下げていないし、その解決には先進諸国が率先して果たすべき責任の大半があるとしている。しかし、もはや「対岸の火事」として傍観することが出来ない状況になっているというのが、途上国の国民一般の偽らざる実感であるといってよいであろう。
特に、近年のアジア地域やラ米地域の一部途上国の急速な経済成長、工業化によるGHG排出量の急増は、先進諸国のそれを大幅に上回っており、直視せざるを得ない状況に達している。米国エネルギー省の推計では、2050年の二酸化炭素排出量は、途上国が世界全体の61%に達し、米国、豪州の19%、削減義務国の20%をはるかに上回る。近年の途上国政府に見られる地球温暖化問題にたいする基本的姿勢の変化は、このような途上国内部における大きな変化に起因するといって過言ではない。
中国、インドをはじめとする途上国では、相変わらず国際社会によるGHG排出削減の義務化には反対であるが、自国の状況に見合った削減数値目標の導入は、多くの国々で積極化してきており、途上国自身が何らかのGHG排出削減数値目標の設定に関する国際合意に歩み寄ることは疑いない。現に来年5月に第4回アフリカ開発東京国際会議(TICADIV)を、6月にG8洞爺湖サミットを迎えるアフリカ連合(AU)では、一方でCDM導入を加速化し、サハラ砂漠以南アフリカ諸国(SSA)が2020(2030)年までに、SSAとしてSSAバブルを導入して、2000(2005)年に対して20%のGHG排出量削減目標を設定するとともに、他方ではGHG大規模排出途上国や中所得国全体にもこの目標の設定を提案するかどうかを協議中であると聞いている。かかる途上国間の合意には、先進諸国をはじめとする国際社会の大胆な協力への合意が前提であることは当然である。(つづく)
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