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2007-09-30 00:00
連載投稿(1)「開かれた地域主義」への疑問
山下英次
大阪市立大学大学院教授
8月、シンガポールで3日間にわたって開催された東アジア・シンクタンク・ネットワーク(NEAT)の第5回総会および第7回国別代表者会議に出席する機会を得たが、その際「開かれた地域主義」を強調する意見表明がかなり多いことに私は驚かされた。
以前から、東アジア共同体は「ASEAN+3」(APT)の公式文書等で「開かれた地域主義」を標榜してきたわけであるが、私は、それはAPTが過去の苦い経験から学び、域外諸国の嫉妬心を刺激しないようにするためのいわば外交戦術だと理解してきたからである。アジア統合の熱心な推進者なら、皆その点については暗黙の了解があるのではないかと理解していたわけある。 そうだとすれば、NEATのようなAPT13カ国のアジア域内だけの会議で「開かれた地域主義」の重要性を敢えて表明する必要は全くないはずである。然るに、各国の国別代表者の多くが、今回の国別代表者会議の場で「開かれた地域主義」の重要性を強調していた。
開かれた地域主義で、地域統合を本格的に進展させることはできない。ヨーロッパも、域外から「ヨーロッパの砦」(Fortress Europe) になるのではないかとの批判が盛んになされたが、その都度EU(EC)は「自分たちはそうなるつもりはない」と外部に対しては表明してきた。また「統一通貨ユーロは決してドルに対する挑戦ではない」とも言ってきた。しかし、それは率直に言って域外諸国に対する外交戦術であり、ヨーロッパの実際の行動は、それとはかなり異なったものであった。
ヨーロッパは、当然のことながらこれまで「クローズドな地域主義」で、「関税同盟→共同市場→統一通貨」と統合の深化を着実に積み上げてきた。そして、ビジネス等の分野でも、いまや自分たちのやり方を極力世界標準にしようとしているように見える。また27カ国となり、国内総生産(GDP) の規模で米国を上回るまでになったEUの巨大市場でビジネスを展開しようと思えば、域外企業もEU法に適合した行動を取らざるをえなくなってきている。ヨーロッパは、環境問題など地球規模での問題意識が非常に高いこともあり、おそらくEUモデルは、いずれ米国モデルを凌駕するようになるのではないだろうか。
われわれアジアも、「開かれた地域主義」で統合が進展するなどという幻想は捨て去るべきである。(つづく)
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