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2007-09-24 00:00
東アジア国際政治の転機となるか
舛島貞
大学准教授
日本が安倍総理の辞任から福田自民党新総裁の選任への過程にあったときに、東アジアの国際政治は大きな転機を迎えていた。9月1日~2日のジュネーブでの会議で米朝国交正常化が予想以上の進展を見せて平和条約構想が伝えられた後、APECの場を利用して、9月7日にブッシュ大統領がノムヒョン大統領に対して、北朝鮮の核政策の状況を条件として、朝鮮戦争の終結を視野に入れた米朝平和条約の締結の意思があることが伝えられた。また同日に、中国の胡錦涛主席と韓国のノムヒョン大統領が会談をおこない、直接的に南北会談について触れなかったものの、六者協議をめぐる枠組みによる朝鮮半島の非核化と安定化について合意していた。
そして9月14日に、ヒル米国務次官補が来年秋の締結を目指す米朝中韓の四国平和条約構想を提起した。安倍総理が退陣したのは9月12日。強硬な北朝鮮政策を売り物にして登場した安部政権が、このタイミングで退陣し、ヒル発言の10日後に柔軟な北朝鮮政策で知られる福田康夫氏が自民党総裁となったことは、決して偶然ではあるまい。東アジア全体で「朝鮮戦争の終結」という大きなアジェンダにはいったことを示唆するこの動きは、注視すべきであろう。
中国は、この動きを六者協議の中で位置づけて賛同している。つまり、平和条約の締結の条件に北朝鮮の核政策をめぐる問題が挙げられているので、六者協議の目指す朝鮮半島の非核化、北東アジアの安全・安定という目標が、この条約で達成されると見るからである。ここに、この平和条約をめぐる米中のアジェンダ・セッティングをめぐる争いが生まれる可能性もあるが、2008年のオリンピックを控えて、両国が目に見えるような衝突をすることは回避されるだろう。
この平和条約が来年秋であれ、あるいはその少し先であれ、締結されれば、東アジアの国際政治は大きく転換する。東アジア共同体構想にも、また台湾問題にも影響を与えることになろう。平和条約が締結されれば、東アジアのさまざまな枠組みに北朝鮮が参加し、その発展を支援することが地域協力枠組みの重要課題となるであろう。これは、これまで北朝鮮を除外してきた地域協力枠組みとは大きく異なる。このとき、日本の立ち位置はどこにあるであろう。もちろん、この平和条約が簡単に締結されるとは思わないし、アメリカ国務省の勇み足である可能性も十分にある。だが、そうした可能性を視野に入れたシミュレーションをしなければならないことも、また確かであろう。
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