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2007-09-19 00:00
連載投稿(1)エネルギー価格の市場化と途上国の対応
武石礼司
東京国際大学教授
石油価格の高止まりが続いている。北米の指標原油のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)が、2007年9月に、1バレル80ドルを超えるという史上最高値をつけるまでに至っている。従来、石油の需給状況を見ることで、価格動向の予測を行ってきたオイル・エコノミスト達にとっては、今までの手法をそのまま用いては、価格動向の予測をことごとくはずしてしまう、難しい状況が生じている。
石油価格は、1980年代に、ニューヨークの商品先物取引所(NYMEX)で石油先物取引が開始されたことで、従来、OPEC等の産油国政府が価格(公定価格)を設定していた状況から脱し、日々の取引の状況を加味し、在庫状況、需給全般の影響を受けつつ変化するように大きく変わった。石油先物市場には、価格を発見し、その価格を世間一般に広く知らせ、その価格を維持する機能がある。さらに、先物市場を利用することで実需筋の市場参加者は、価格の変動に備える(ヘッジツールとしての先物・オプション等の利用)ことができる。また、金融商品としての売り買いを行い、鞘取り(アービトラージ)を行う金融業者も石油先物市場に加わることで、市場取引の厚みが増し、原油・ガソリン・灯油・燃料油等の上場商品間の価格差を、品質別等、適正なプレミアムを持った価格に均等化する作用も期待できるようになった。
産油国が設定した公定価格の時代における、需給の動向を適切・適時に反映できないシステムは過去のものとなり、とりあえず、市場への参加者の納得づくにより価格が決まるという方式への転換が進むことになった。産油国政府も、時代の趨勢に従い、先物市場価格に従いつつ販売を行い、原油の生産数量については、OPECが生産枠を設けて需給を調整するという方式が続くことになった。
ただし、こうした市場価格に則った国内での石油販売を避け、国内向けの石油製品価格を、補助金を支給することで安価に設定し、国内産業の保護を図る途上国が、従来から多く存在してきた。しかし、補助金を支給し続けることは、途上国にとっては財政上の大きな負担であった。しかも、国内向けの石油製品価格を安くすれば国内産業が育つかと言えば、むしろ、単に国民への人気取り政策として安価な供給が継続されることで、政府による保護に慣れてしまう状況が生み出されることになり、エネルギー効率が悪く、品質面でも国際市場への輸出ができない産業を維持する結果が多く生じた。
OECD、世界銀行、IMF等、様々な機関が、途上国における補助金の支給が適切な市場取引をゆがめているとのキャンペーンを行うこととなった。そうした外圧の効果もあって、次第に補助金を削減し、国際的な市場価格を受け入れる途上国が増えることになった。タイ、インドネシア、インド等、過去においては多大の補助金が国内向けの石油製品に支給されており、補助を削減することは社会的な混乱をもたらすとして、政府がその対応に苦慮してきた国々もあった。しかし、これら諸国においても、補助金の大幅削減、市場価格の受入が、大きく進んだ。(つづく)
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