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2024-11-30 00:00
(連載2)経済問題から社会問題に焦点が移ってきている中国の行方
岡本 裕明
海外事業経営者
中国ではこれらを「報復社会」と称しているそうですが、報復の対象を社会にぶつけているように見えます。その報復をする可能性がある人を「五失人員」と呼んでいます。この意味をあえて中国語辞典で調べてみると投資失敗人員、生活失意人員(人生に挫折した人)、心理失衡人員(精神バランスが崩れた人)、关系失和人員(調和の取れない人)、精神失常人員(精神を病んだ人)となっています。
私の解釈はあるべき期待値、安定、計画が崩れ、元の状態に戻すのが極めて難しく、夢も希望も復活するためのチャンスすら見いだせない状態にある人とも解釈できます。悪いことに中国は閉鎖社会であるがゆえにそれらの蔓延した悪い空気が「換気」されず、更に「精神衛生的の空気汚染」が進行している状況にあると言えます。もちろん、共産党の縛り上げる政策がそうさせているわけですが、中国社会形成に何か独特の理由が潜んでいるような気がしてなりません。私は中国研究家ではないのでその「独特の何か」が学術的にこうだ、というのができないのですが、個人的には20年強の間に社会が急変しすぎたことに原因を見出すことは可能ではないかと考えています。
冒頭に中国の20年強の変化ぶりについてあえて立ち返ってみたのはここにあります。あまりの変化と刺激は通常スピードより2倍、3倍の早回しの状態とも言え、大多数の国民は表層的な近代化を享受したのです。ところがモノの本質論、労働とその対価の意味や社会の価値観、教育とその育成、人間力については1倍速である20数年の時間軸のまま進んだのです。すると「人間としての基盤」と「社会の進化や変化」の間にギャップが生じ、国民がこれを吸収できなくなるのです。「五失人員」のような問題が起きた時、人間の本能的回復力で未然に防ぐことができないのではないか、という仮説を考えています。このような問題は中国に限らず、アメリカでも日本でもあります。アメリカでの無差別に銃を撃ちまくる事件や日本の通り魔殺人はその一例でしょう。懸念されるのはその潜在爆発性が中国でより高まっていやしないかという懸念があります。
このような中国はどこに向かうのでしょうか?正直想像がつきません。1週間に3件程度の殺傷事件はほんの入り口に過ぎないのではないか、という気がしてなりません。理由は共産党が国民をロボットのようにすることで個性を抜き去ろうとしたのに対してそれが機能せず、人間たる中国人が暴発し始めたということであります。現在の報復社会の動きは個人レベルですが、必ず集団化するときが来るでしょう。その時、警察が力づくで抑え込むことで更なるストレス社会を作り出す悪循環に陥ってもおかしくはないでしょう。厳格なる権威主義国家の行く末がどのような形になるのか、案外判明するのはさほど遠くない時期なのかもしれません。(おわり)
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