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2024-10-09 00:00
(連載1)法の支配VS倫理観
岡本 裕明
海外事業経営者
イアン ブレマー氏が「バイデン氏と異なる『ハリス外交』」(日経)と称した寄稿をしています。ブレマー氏はバイデン氏とハリス氏の違いについて育った世代を指摘しています。81歳のバイデン氏は冷戦時代育ち、59歳のハリス氏はポスト冷戦期であることが国際秩序に関する基本的思想の相違を生んでいるというわけです。バイデン氏は倫理的な見地から世界があるべき方向を見ているのに対し、司法というキャリアを持つハリス氏は法の支配という観点が強いというわけです。なるほど、確かに面白い着眼であります。
私は90年代はカナダとアメリカ両方の兼任だったのですが、当時から強い思いがあったのは北米、特にアメリカは法律の縛りに依存しすぎている点でした。思い出すのは当時、シアトルのスタバでもフロリダのスタバでも同じ味で同じサービスが受けられるのはルールや規範でアメリカ人を縛り上げ、個性を出させないからだ、と言われたことがあります。アメリカは多民族の上に東西南北でかなり文化が違うし言語(表現)も若干違います。それらを一体化するのは様々な常識観に蓋をすることが必要だというわけです。
但し、このマニュアル縛りの発想は今ではだいぶ変化しており、一字一句ロボットのような扱いをする非人間的なやり方ではなく多少柔軟性を持たせ、個性を感じられるように変化しています。つまり法(ルール)の支配から倫理の観念を取り入れる方向に揺り戻しが起きているように感じます。
ブレマー氏の寄稿の最後のほうでイスラエル問題にさらっと触れています。「パレスチナ自治区ガザとヨルダン川西岸におけるイスラエルの国際法違反に米国も関与しているとされる問題に対し、ハリス氏はバイデン氏より神経をとがらせている。ハリス氏が法の支配を尊重するようイスラエル政府への働きかけを強める可能性はある」とあります。つまり今、イスラエルが行っている行為に加担するアメリカは自らが法のルールに基づいていないかもしれないのでこの戦いを抑制させるのではないか、というわけです。バイデン氏はイスラエルのヒズボラへの攻撃について側面支援するのみならず、イランがイスラエルに行った攻撃に対しても「対抗措置を取る権利がある」と述べているのは倫理的観点が強いわけですがこれを法のルールに基づいた判断にシフトさせればバイデン氏の立場は微妙になりかねません。(つづく)
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