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2024-09-24 00:00
(連載2)ロシア・ウクライナ戦争の調停者を務めることができるのは誰か
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
ウクライナは、第二回「平和サミット」を開催して、できる限り自国の意向にそった停戦の枠組みを国際的に確立していきたいと考えている。そのため、仮にウクライナを支援している国でなくても、「平和サミット」共同宣言の署名国でなければ、調停者としての役割を与えることにも反対だ、という態度である。ゼレンスキー大統領は、BRICS構成国である中国とブラジルが共同で打ち出したウクライナ危機の和平構想を「破壊的な提案で、単なる政治的な声明だ」と非難し、両国がロシアに近すぎることを批判的に示唆した。
ゼレンスキー大統領は、国連総会にあわせてニューヨークを訪問する予定だが、その際にラテンアメリカ諸国と会合を持つことを画策していたという。しかし出席見込みの国の数が少なすぎるためキャンセルになった、と報道されている。東南アジアにおいても、マルコス政権下で際立った親米路線をとっているフィリピンを除けば、ウクライナとの関係の発展に関心を示している国は見られない。マレーシアやタイはBRICS加盟申請中だ。当初は調停に関心を持っているように見えたインドネシアも、その実現可能性を見限って、関心を失っているように見える。
調停者がいれば調停ができるというものではないが、調停者がいないままでは調停の可能性が著しく乏しいままであることは間違いない。恐らくは政策の刷新を掲げる大統領としてトランプ氏がアメリカの大統領に選出されると、新たな機運がもたらされるかもしれない。しかしウクライナに一方的に譲歩を求める内容であれば、ウクライナが拒絶して、欧州諸国にだけ期待する姿勢に転ずる可能性はある(賢明とは思われないが)。トランプ氏がロシアの譲歩を求めるのであれば、ロシアは少なくとも中国などが同等の地位で調停者として関与する仕組みを求めるだろう。
第三者性がある国際機関のような調停者の候補が見つからない場合には、「四者協議」的な仕組みをとって、それぞれの当事国の有力な支援国、つまりアメリカと中国が入るような仕組みを考えていくしかないだろう。ロシア・ウクライナ戦争はいつ終わるか不明だ。当事者は、停戦の機運そのものに反対しているような素振りがある。しかし停戦ではなく勝利を、といったかけ声は、実は修辞的なものでしかない。たとえばウクライナがロシアの占領地を全て奪還する「勝利」を収めたとしても、ロシア軍の侵攻が止まらなければ、なお戦争は続いていく。ロシアかウクライナのどちらかの国の国家としての存在の消滅を視野に入れるのでなければ、必ず停戦の際の調停は必要である。そのためのイメージづくりは、怠ることができない。(おわり)
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