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2024-09-10 00:00
韓国の防衛産業について
真田 幸光
大学教員
韓国は、防衛装備品の輸入代替化と自国防衛の強化、そして防衛産業の輸出産業化を目指して、産官学金融連携で防衛産業の強化を図ってきている国である。先日も、韓国陸軍第5砲兵旅団射撃場では、5台のK9自走砲が同時に火を噴く形で、交戦状態を想定して行われた同時弾着射撃(Time on Target?TOT)訓練を行った。そして、その日の乗組員が韓国人兵士ではなく、オーストラリア軍、ひげを伸ばしたポーランド軍、茶色い肌のエジプト軍の兵士らが射撃ボタンを押していたと報告されている。韓国陸軍砲兵学校で韓国軍のK9自走砲運用ノウハウを習得したオーストラリア軍、ポーランド軍、エジプト軍の兵士14人は、12キロ離れた仮想の標的を実弾で制圧することで、3週間にわたる戦術機動実習を終え帰国した。
韓国陸軍は7月9日から約3週間、「陸軍国際課程」でK9自走砲の教育を初めて実施し、韓国のK防衛産業の代表とされるK9自走砲の運用ノウハウを外国軍兵士に直接教育すると同時に、将来的にK防衛産業の領土を広げる狙いを持っていると見られている。教育は全て英語で行われ、韓国国内報道によると、ポーランド陸軍のクラウクツク准尉は、「K9の迅速な射撃準備と統制、正確な打撃能力、素早い再装填、高い生存性確保のプロセスなどを体感出来た。」と述べたと報道されている。韓国陸軍本部はまた、「防衛機器メーカーが指導できるK9運用法は車の運転に例えれば免許試験場で行うオートマ(AT)運転のレベルであるが、韓国軍ではより実戦的かつ専門的な路上での走行スティック(マニュアル)運転レベルの運用法を伝えることが出来る。装備の操作法に加え、緊急対応については韓国軍から直接学ぶことが最善である。」とコメントしている。
今回の教育に参加したオーストラリア軍、ポーランド軍、エジプト軍の兵士らはK9自走砲を緊急時に直射で射撃する方法や、自動砲放列(射撃準備)システム故障時に手動で放列を行う手順などを習得した。ポーランド軍は現時点でK9の実戦配備は行っていない為、直射射撃は想定以上に難しかったとしている。その為、韓国軍に感謝の言葉を伝えたとも報道されている。 陸軍が行う今回の国際課程にはエジプト軍大尉2人も参加したが、イスラム教を信仰する彼らは1日5回礼拝しなければならない為、陸軍は砲兵学校講義室の1室を礼拝室として対応した。また砲兵学校のある全羅南道長城郡ではハラル食の確保が難しいことから、魚介類中心の食事を提供したと報道されている。韓国軍は彼らが来る前に駐韓エジプト大使館に宗教や食生活について確認するなど、生活面でも配慮を行った。韓国陸軍は今回のK9教育をオーストラリア軍、ポーランド軍、エジプト軍に対して行ったが、11月に予定されている2回目の国際課程では参加国と科目を増やす計画とされている。陸軍は上半期のK9課程に加えK2戦車の運用法、K9・K2整備法など4課程も新たに開設する計画としている。今回参加した3カ国に加え、今後はトルコとカタールが既に参加の意向を表明していると報告されている。
韓国陸軍本部は、「防衛産業協力国が購入した装備に合わせて教育を支援し、人的ネットワークも形成することで将来的にK防衛産業の拡大に貢献したい。」との考えを示し、実際に今回の訓練を通じてK9自走砲と連携するK10弾薬補給装甲車への海外からの関心も高まっていると見られている。K10弾薬補給装甲車はK9に自動的に弾薬を積み射撃効率を向上させるが、これを今回の教育課程で外国軍兵士らも体感出来たとしている。韓国陸軍は今回参加した外国軍兵士14人と韓国軍の初級幹部や士官生徒14人をマッチングして互いの親交を深めていきたいともしている。韓国の防衛産業強化は、ハード面のみならず、こうしたソフト面も含めた形で推進されていると見ておきたい。但し、これが倫理観的に良いものであるのか否かは議論していきたい。一方、防衛産業大国である米英やイスラエルなどの反応にも注意を払いたい。
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