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2024-09-04 00:00
(連載2)負のサイクルから抜けられない中国経済
岡本 裕明
海外事業経営者
ところが中国の場合2つのエラーが起きたとみています。1つは国民の消費行動が受動的で人の話や評判による行動規範が強く出る点です。(中国ほどではないですが、日本もこの点は否定しません。)そのため例えば、不動産⇒儲かる⇒買う⇒儲かった⇒人に言う⇒皆が買うという流れが強く出ます。不動産をEVに置き換えた場合、皆が乗る⇒自分も乗る⇒補助金の大盤振る舞い⇒Buy Chinese 主義万歳 ということになるのでしょうか?もう1つのエラーは政府が経済の自由度に制約を加えたことです。これは習近平氏が考える共産党のイデオロギーとの対比において困る業種、例えば民間企業のビッグデータが国家保有データを凌駕するリスクとか、教育の仕方が欧米的になれば共産主義を否定する輩も出るだろうといったリスクです。これらは中国共産党が自らの身を守るために設定した制限ルールです。
一方、以前も書きましたが、国内の需要が十分でなければ海外で売り捌くという姿勢があり、中国製品が雪崩のように諸外国に押し寄せています。これで世界経済の歯車は当然狂ってしまいます。これが今起きていることです。ここでカナダが立ち上がりました。中国製EVに100%関税実施をアメリカに先駆けて実施することにしたのです。アメリカはEVの100%関税をアナウンスしていますが、手続きに時間がかかっており、具体的な発表は9月下旬以降になるはずでカナダが先行した形になります。ではなぜカナダが先行したか、これはたぶん日本のメディアは触れていないと思います。
理由はテスラにあります。アメリカで売っているテスラはアメリカ製。ところがカナダのテスラは中国上海製なのです。カナダ政府はこれを嫌ったのでしょう。今回の100%関税はテスラ社への対抗措置なのです。テスラ社はやむを得ないのでアメリカか欧州で作るテスラをカナダに振り替える準備に追われるのです。ちなみにカナダではテスラ以外は中国製EVは市場に実質的にはないと理解しています。日本市場ではBYDを含め中国EVの販売を展開する動きが出てきています。政府は関税なりで対抗措置をとれるのでしょうか?日本はそもそもEVに対する反応が鈍いのですが世界でも名だたる自動車王国で中国製EVとなれば恥ずかしいどころではありません。
中国が経済的に回らない、少額消費すらおぼつかないとなれば次に起きるのは富裕者層の国外脱出だとみています。これは以前ほどたやすくないでしょう。お金があれば外国のパスポートを取得できた時期もありますが、その後、中国人が移住先国で様々な活動、主に中国共産党との連絡を含めた協力者となるケースがあるためです。このあたりの感覚が日本では鈍いですから中国の富裕者にとって移住対象になりやすいのが日本になりかねないとみています。香港で1997年返還前富裕層の国外脱出がおきたのを私はつぶさに見てきました。今、それが中国本土で起きた場合、それは中国にとっても世界にとっても頭痛のタネになるでしょう。中国はモノだけでなく、人も輸出してきたぞー、ということです。(おわり)
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