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2024-07-21 00:00
(連載1)アフガニスタンについて熱弁をふるったトランプ氏
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
トランプ前大統領が、正式に米国共和党の大統領候補となった。私はアメリカ政治を専門にしているわけではないので、普段から継続的に細かな米国内の動向を追っているわけではない。しかし次期米国大統領の政治姿勢は、やはり気になる。動画でトランプ氏の指名受諾演説を見てみた。暗殺未遂事件の描写は、語り部としてのトランプ氏の才能が現れていただろう。神妙な態度で神について語る様子、事件で亡くなった消防士のコリー・コンペラトーレ氏の消防服とヘルメットを抱きしめる様子などは、さすがのシーンであった。
しかし話が長い。おまけに脱線しては戻ってきたりする。約90分にわたる指名受諾演説は、2016年の自身の記録を破る最長時間であったという。聴衆も盛り上がっていたが、話の細部を把握していたとは思えない。私もとてもついていけないので、書き起こし文を見つけて、読んでみた。すると、メディアも取り上げていないが、興味深い部分が幾つかあることがわかった。トランプ氏が、バイデン大統領は最悪だ、と語るとき、真っ先に言及するのが、外交政策だ。バイデン大統領の時代になってから、世界は戦争だらけになってしまった、ということを語る。トランプ氏が大統領だった4年間は平和だった、というわけである。
世界情勢の細部に至るまで、そのような総括でまとめることが可能かどうかについては、疑問の余地がありうる。ただアメリカ国民から見れば、トランプ氏が言っていることは、あながち嘘とは言えないだろう。焦点の一つは、言うまでもなくウクライナである。ロシア・ウクライナ戦争が、米国の庶民を苦しめている物価高の遠因になっていること、巨額の資金をウクライナ支援にあてていることは、アメリカの直接参戦の有無という点をこえて、2024年現在の大きな論点であることは間違いない。トランプ氏は言う。
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「ブッシュ大統領のとき、ロシアはジョージアに侵攻した。オバマ大統領のとき、ロシアはクリミアを併合した。バイデン政権のとき、ロシアはウクライナに侵攻した。トランプ大統領のとき、ロシアは何もしなかった。」(Under President Bush, Russia invaded Georgia. Under President Obama, Russia took Crimea. Under the current administration, Russia is after all of Ukraine. Under President Trump, Russia took nothing.)https://www.nytimes.com/2024/07/19/us/politics/trump-rnc-speech-transcript.html
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この話の文脈で、ハンガリーのオルバン首相についても、かなり長い言及を行った。オルバン首相が、トランプ氏が米国大統領に戻ってくれば世界は安定する、という趣旨のことを言っているという紹介だった。トランプ氏も、オルバン首相を称賛した。私が一番興味深く感じたのは、アフガニスタンへの言及だ。2021年8月のアフガニスタン完全撤退時、13人の米国兵士が死亡した。これはバイデン政権の失策による必要のない悲劇だった、とトランプ氏は振り返る。トランプ氏によれば、アフガニスタン撤退は、バイデン政権が作った、アメリカの歴史に残る屈辱である。タリバンと「ドーハ合意」を結んで、米軍の完全撤退の路線を作ったのは、トランプ政権である。そのためトランプ氏のアフガニスタンに関するバイデン大統領への批判は不公平だ、と言われるときも多い。しかしトランプ氏によれば、トランプ氏が第二期政権を作れていれば、計画通りの円滑な撤退を果たすことができたはずなので、屈辱的な混乱は発生せず、13人の米軍兵士も死ななくてすんだ、というわけである。(つづく)
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