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2007-09-17 00:00
連載投稿(3)インド国内の諸問題と今後の課題
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
第4セッションでは、急速な経済成長の下でも中々縮まらない貧富の格差、都市・農村間や地域間、性別の所得格差、人間格差(教育、健康、安全な飲み水、衛生等)に焦点が当てられ、インドの経済成長を持続させるためには、これらの格差の着実な縮小のみならず、経済成長の便益がすべての国民各層、地域に浸透することが不可欠であることが強調された。インド経済が躍進し、中産階級が急速に拡大し、若者の就学率が高まり、高等教育を受けた人々が急増する中で、相変わらず3億人を超える人々が一日1米ドル以下の所得しかなく、かれらの人権が侵害されているということは、インド国民はもちろん、政府にとっても耐えられない事実であることは、近年インド政府が発表してきた各種の貧困削減政策を見れば明白である。
同様なことは経済のグローバル化の中で急速に経済成長している中国、ブラジル、メキシコ、ロシア等の新生経済国に共通してみられる現象であり、筆者も今回の国際会議の主催者の要請を受けて、この問題についての理論的枠組みと政府の政策のあり方について論文を提出したが、経営者の集まりである今回の会議でこの問題について一つのセッションが設定されたことは、インドの企業経営者自身がインド経済・社会に潜むこれらの課題について如何に深刻に捕らえているかを示していたといってよいであろう。このことは、将来東アジア経済共同体を構成する大半の国々にとっても他人事ではない。
第5セッションでは、1990年代以降の急速な経済成長を、国内外の変化に対して政策的・制度的改革で対応したインド政府、企業、専門家の「世界的視野」を振り返りつつ、州レベルの各指導層の内向きの考え方の切り替え、硬直的な労働関係法規制と生産的部門への国内貯蓄の投融資を抑制している非能率的かつ保守的な金融部門の改革こそ、今後の改革の中核であるという認識が共有された。
第6セッションは、世代間の連携という主題の下で、今後インド経済の急成長が持続するかどうかは、近年と同様に、政治家、企業家、技術者、官僚、市民社会の連携の強化とそれを支える老若世代間交流の存在にあるという認識の下で、すべての市場参加者が、今後一層(1)entitlementよりもachievement、(2)servitudeよりもemployability、(3)paternalismよりもpartnership、(4)local benchmarkよりもglobal benchmark、(5)copyingよりもinnovation、(6)wealth ownershipよりもwealth sharingを大切にして、政府はこれらの実現を容易にするためには、総ての関係者の参加の下で透明性(transparency)と負託責任(accountability、日本では「説明責任」と訳されて、政府もマスコミもこの語句を相変わらず使用しているが、これは基本的に間違い)に裏付けられた「良い統治」に徹することが急務であるという点が強調された。(つづく)
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