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2024-03-20 00:00
今回の全人代で習近平はヒトラーに肩を並べる独裁者になった
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
3月11日に閉会した中国共産党の全国人民代表社会議(全人代)は、異例づくめであった。そもそも、昨年「政治的に対立していた」共産党青年団の出身であった李克強が常務委員どころか完全に引退してしまった。そしてその後継者で共産党青年団の次世代のリーダーとみなされた胡春華も、常務委員になることが期待されたが、逆に政治局員からも外されてしまい、完全に共産党の指導部から姿を消した。「失脚」というよりは「実質的な粛清」に近いのではないか。今回、中国共産党・各民主党派・各団体・各界の代表で構成される全国統一戦線組織である全国政治協商会議の副主席になったが、その主席には王滬寧常務委員が入ることになり、完全に監視されたような状況になっている。このような人事になり、「習近平独裁となること」に反対していた胡錦涛前国家主席は、2023年の全人代の途中に、退席するというようなことになり、かなり世界でも話題になった。その後、胡錦涛氏の息子が要職に迎えられることをもって「和解した」というような話があったが、実際はどうであるか。
このように、2023年に一度ほぼ全部退場させられた共産党青年団が、今回の全人代で復活してきているように見える。しかし実際は全くそれとは異なる内容になっているのである。
さて、ここでその人事のことはまた後に話すとして、もう一つの異例の話をしてみよう。通常は国務院総理が会見を開くことが通例である。これはある意味で日本の株主総会における営業報告を、業務の執行責任者、つまり「オペーレーティングの責任者」が発表するということが通例である。しかし今回はその李強首相の記者会見もなかったということになる。この解釈は二通りある。一つは「行政の総責任者が責任をとれる立場にはない」ということである。つまり、肩書やポストは同じでも、権限が縮小しているということになる。そしてもう一つは、そのような報告ができないくらいの行政の状態であるということである。
昨年の全人代で常務委員会に関しては基本的に習近平国家主席のイエスマンだけになった。しかし、その様になったところで、会議をしなければならないということに変わりはない。そのような場合に「独裁者」がおこなうことは「会議を開かなくても行動できる自由」を求めるようになり、権力を強める行動になる。1933年3月 23日、当時のドイツの議会は、議会や大統領の承認なしに政府が立法権を行使できる法律である「民族および邦の危機を除去するための法律」(Gesetz zur Behebung der Not von Volk und Reich)が制定された。いわゆる「授権法(全権委任法)」であり、制度的にナチスの独裁を認める法律となった。当初は4年間の時限立法であったが、更新を繰返し、ナチスの独裁に合法性を与えることになった。
さて今回の国務院組織法の改正に伴って習近平の権限が強くなり国務院の権限は縮小された。法改正は政府・内閣に対する党の指導力を強め、「習近平」思想などのイデオロギーに従うよう促すものとなった。国務院はまた、共産党員で占められている全人代からの監視も強化されることになる。このことによって実質的にヒトラーと同じように習近平が完全に独裁者となったことを意味する。上記の李強首相の会見がなくなったということに関しても「李強首相はすでに行政の責任を負える立場にはない」ということであり、多くの官僚組織を抱える国務院は、習近平の意志を実行する執行機関であり、要するに雑用係となったということを意味しているのである。そのうえで「できなければ(または命令に従わなければ)共産党の意志に反したとみなす」とされ、反腐敗などで処罰されるということになるのである。このことは、国家社会主義という政治体制や国家体制を含めて、ナチスドイツと同じことになる。ついでに言えば、経済的にも悪化ているということであり、一度自由化民主化に近くなった中国が、その経済の悪化と周辺国との対抗的な関係によって、独裁的な活動と国際的に独善的な行動をとるということになるのではないかと危惧される。つまり、最終的に国家の中の矛盾が大きくなり、なおかつ、経済の悪化などが起きた場合は、公共事業などでカバーできなくなり、最終的には軍事的な行動に出るということは、ナチスドイツという歴史が教えてくれているのである。そしてそれを止める国内の勢力である官僚組織は、権限を奪われ、なおかつ肩書だけを復活させられても、共産党の監視下にあり権限を与えられないということを意味しているのである。このように総合的に見れば、習近平が戦争を発言しないでも近未来に何が起きるのかはわかるのではないか。日本はそのようなことを歴にし学び、それに備え、最悪の事態にならないように準備しなければならない。
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