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2007-09-10 00:00
「価値の外交」への課題
舛島貞
大学准教授
イメージを創出する外交としての「価値の外交」はやや影を潜めつつあるようだが、対外関係において、そうした価値に裏打ちされた外交のイメージをしっかり伝えることは重要だ。もちろん、このような路線、とりわけ「自由と繁栄」、あるいは「民主」というキーワードが最終的に中国への批判的な目線に支えられているために、中国包囲網として想定されているのではないかという疑念もうんだ。中国はこのところ「人権」を掲げた外交を展開し、日本の慰安婦問題などを人権問題として、国連の場など国際社会において訴えていく方向性をとっている。そうした意味では、中国はこうした自由や民主を掲げた外交にも正面から反対するとは思えない。
しかし、一方で、中国は人権をめぐる批判には強烈な反論をおこなっている。以下に紹介するのは3月上旬の外交部スポークスマンの発言だ。
「アメリカの国務省が発表した国別の人権報告について、外交部は昨日正式な対応を示した。今日、中国国務院は『2006年アメリカ人権紀録』を発表した。この報告こそは、ひとつのアメリカに自らを見せるための鏡である。アメリカはこれを通じてよくよく自分を見てほしい。そして、自らが『人権を守る騎士』などと名乗る資格があるのかどうかよくよく考えてほしい。他人のことをいろいろとあげつらって、人権を理由に他国の内政に干渉し、自国の国内は別におくというダブルスタンダードをアメリカは有しているのだ。中国はアメリカにひとつの贈り物をしたい。それは四書五経だ。四書五経には『大学』や『論語』が含まれている。ここには中国古代の偉大な哲人たちの多くの思想が含まれている。中国には『論語の半分あれば天下を治められる』というが、『論語』の教えは単に人としてどうあるべきかを教えるだけでなく、処世、そして治国についても教えている。孔子は『大学』で、どういっているか今一度見てほしい。『正心、修身、斉家、治国、平天下』といっているのだ。アメリカには孔子の文章をよくよく読んでほしい」
グローバリゼーションの時代、交流や対話が盛んにおこなわれるなか、こうした根源的な問いはいっそう増している。そうしたときに、日本としてよりどころとする価値はなになのか、正しいことはなにだと思っているのか、ということを発信することは、やはり必要なのではないだろうか。その価値や正しいことは、決して黙っていてもわかるような自明なものだとは言い切れないからである。
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