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2023-12-28 00:00
経済安全保障について
真田 幸光
大学教員
米中覇権争いが激しくなる中、「経済安全保障」に関する意識も高まり、日本国内でも、公安関係の検査も厳しくなっています。そして、米国を軸とする諸国では、「中国本土への技術流出ルートになる可能性」がチェックポイントともなっています。こうした中、米国が様々な方面からUAEに対してG42への懸念を伝え、「中国本土との関係断絶」を事実上求めるような動きが出ているとも見られています。
即ち、アラブ首長国連邦(UAE)のオイルマネーを基盤に設立されたグローバル人工知能(AI)企業である「G42」について、米国は、「中国本土にAI技術を流出させるルートになる恐れがある。」としてUAEに懸念を伝えたとの観測報道が、米国・ニューヨーク・タイムズによってなされました。ニューヨーク・タイムズは内部筋の話として、「G42が米国政府の監視対象リストに掲載された。」と報じ、中央情報局(CIA)のバーンズ長官、レモンド商務長官、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のタルン・チャブラ技術・安全保障担当上級部長らもUAE政府関係者に対して、「G42問題」について強い懸念を示したと報じています。この会社はUAEのタフヌーン・ビン・ザーイド国家安全保障局顧問が投資し、2018年にUAEの首都アブダビで設立された会社で、金融、医療、エネルギーなど様々な分野に事業を拡大する世界的なAIプラットフォーム企業であります。
最近もChatGPTを開発した米国のオープンAIとパートナーシップ契約を締結し、米国のシリコンバレーのスタートアップに独自開発したチップを利用したAIスーパーコンピュータを発注するなど、データプラットフォーム事業の拡大に力を入れている会社でもある。タフヌーン・ビン・ザーイド顧問は、「UAE建国の父」とされるザーイド元大統領の息子であり、ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領の弟であり、UAEの実力者であります。
石油のみに依存する産業構造の変革を進めるUAE王家の1人でもあります。ニューヨーク・タイムズによると、CIAなど米国の情報機関は、G42が中国本土系通信機器メーカーのファーウェイ、製薬メーカーのシノファームなど複数の中国本土企業と提携しているとの報告書を取り纏めており、G42が数百万人の米国人のDNA情報まで、中国本土政府に引き渡す懸念があるとも指摘しています。
米国の情報機関はファーウェイが通信機器に通話の内容やデータを流すバックドアを仕掛けたと疑っています。また今年6月にタフヌーン・ビン・ザーイド顧問がホワイトハウスを訪問した際、サリバン国家安全保障担当補佐官は、「G42は中国本土企業との関係を断ち切るべきである。」と圧力を加えたとの報道もなされています。中国本土系でUAEの市民権を持つ肖鵬氏がG42のCEOであることも米国がG42に疑いの目を向ける理由の一つとも見られています。 今後の動向を注視したいと思います。
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