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2023-11-03 00:00
イスラエルは何故、意固地に戦うのだろうか?
岡本 裕明
海外事業経営者
今から30年も前、私は宗教については疎かったと思います。会社で送るクリスマスカードは日本の年賀状のようなもの。カードにはメリークリスマスと記してあり、従業員が皆でサインしたものを取引先に送るのが普通でした。当時、有力取引先にユダヤ系がいくつかあったのですが、それを見過ごし、同じカードを送ってしまったのです。もちろん、先方からは何も言われませんでしたが、ずいぶん失礼なことをしたと反省したものです。あるユダヤ人とは私がカナダに到着したDay1からのディープな付き合いです。彼が無知な私をハヌカのお祝いの際、家に招待してくれました。伝統的なそのスタイルを教えてもらった頃からユダヤを意識するようになりました。その彼とは今でも年に1-2回会う関係です。他にもユダヤの知り合いは多いし、北米でユダヤ人の存在感は政治経済に於いて非常に重要である故、今回の事態は実に悩ましいところであります。
ユダヤ人が嫌われる、という話はご存知かと思います。とくに有名なのがホロコーストでナチス、ヒトラーによるユダヤ人の弾圧は酷いものでした。ですが、ユダヤ人は太古からその宗教観ゆえに他の民族とは一線を画していました。そのユダヤ人も負けず嫌いで常に主張をし続けることからしばしばアーリア人と確執が起きたわけです。中央アジアに起源があり、南に渡ったインド系と西に渡ったヨーロッパ系に分かれたあのアーリア人です。私がユダヤ人の彼と10年間、仕事を一緒にした中で時々耳にしたのは「ユダヤ人は嫌だよな」という囁きでした。彼の仕事が強引、かつ論理の押し付け、相手が首を振るまで動かない、という姿勢が相手方からすれば「勘弁してよ」という嘆きになるわけです。多くの成功したユダヤ系の方は押しが強いはずです。日本の中では「ユダヤに学べ」という書籍が山のように出版されていますが、そんな美しい話ばかりではないのです。さて、今回、イスラエルは実質、地上戦に入りました。ハマスが予告なしで攻撃した時は国際世論はイスラエルに同調的でした。が、徐々にトーンが変わっていったのはお気づきになりましたか?バイデン氏も人道支援が最優先と言わざるを得ないのはイスラエルがあまりに憤っており、放置すればどこまでやるのか見当がつかず、「見境がつかない」状況になるのを恐れているからです。マクロン大統領もそれを進言しにネタニヤフ首相と会談しましたが、ネタニヤフ首相は「会っただけの聞いたフリ」状態でした。
ネタニヤフ氏にすれば「イスラエルの真の気持ちがわかる同胞など他にいない」というスタンスなのでしょう。今の主攻撃地はガザ地区の北部ですが、地下要塞を壊すだけではハマスは全滅しません。彼らは南部に逃れた一般市民の中に潜り込み、市民を隠れ蓑に使っていることは当然察知しているのでハマスの部隊をどう炙り出すか思案しているものと思われます。また、ガザ北部を実効支配するのか、要塞を破壊して撤退するのかも見通せません。個人的には一時的な実効支配をするとみています。パレスチナとイスラエルの争いはかつては断続的でした。つまり、戦火があったと思えば割とすぐに停戦をしていました。それは地政学的にも微妙なバランスで成り立っているのがイスラエルという国であり、押しすぎればイスラムだけでなくキリストからも強烈なバッシングが来るのが分かっているからです。ところがネタニヤフ首相はこの戦争の行方次第では自身の首相の運命は終わります。中途半端ではまずい、というのが氏のポジションであります。(それはプーチン氏も同じ。)国を護るという圧倒的な保守的思想のもと、戦時体制を敷き、テロリストの根絶やしを目指す勢いかと思います。ただ、敵はハマスだけではないのです。はるかに強力なヒスボラなど他の過激派組織がレバノンやシリアに控えており、既に一部でイスラエルと戦火を交えています。仮にイスラエルが両面作戦を強いられたとしても国際世論の動きはウクライナの時のようにはならないはずです。それは冒頭のストーリーが背景なのです。つまりユダヤ人は好かれないのです。
本国以外でユダヤ人が最も多く住むのがアメリカです。700万人はいるでしょう。カナダも多いです。が、国レベルで支援体制を取れるのはアメリカぐらいなのです。英国は態度表明を留保しています。イスラエルはなぜ、意固地か、といえばそもそもおかれている歴史的、民族的背景が作り出す人種としての血統の濃さ、そしてもう一つがネタニヤフ首相の超保守的思想と自身の政治生命の融合ではないかとみています。イスラエルは引きません。今のように過激派との戦いなら収拾の余地はありますが、仮に、国家同士との戦いになるとそれは非常に困難で解決しにくい泥沼となります。今はまさに瀬戸際にあるとみています。
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