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2023-08-30 00:00
不安が高まる中国本土経済
真田 幸光
大学教員
最近になり、中国本土経済に対する不安が高まってきている。そして、恒大集団が米国で債務不履行となった。中国本土の不動産景気低迷にあり、一連の事態を受けて、アジア各地の株式市場では株価が一旦軒並み下落するなと背の事態も見られている。即ち、日経平均と香港ハンセン指数はそれぞれ下落し、中国本土上海総合指数も下落、また、これまで電池、超伝導体関連銘柄で過熱した韓国株も一時下落する事態となった。米国の7月小売売上高が前月対比0.7%増加し、市場予測の0.4%増)を上回ったことも株式市場には悪材料となる。即ち、米国経済が依然として堅調で、米国の金利が高止まりしかねないとの観測が強まったから、弱含みとなったとは言われているが、やはりアジアでは中国本土経済に対する懸念が強いものと思われる。また、恒大集団に続き、中国本土の不動産大手ディベロッパーであるの碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)や遠洋集団などのデフォルト(債務不履行)危機が国際金融界に拡大しており、連鎖的債務不履行Domino Defaultが起こり、これが起因となって、「中国本土版リーマンショック」が起きるかもしれないとの懸念も示されている。
こうしたことを背景として、約12兆円以上の資産を運用する中国本土最大の信託会社である中龍国際信託が先月下旬以降、信託商品10種類以上の支払いを延期している。同社は今年満期となる270種類の高収益商品(7,920億円規模)を運用しており、顕在化すれば、大きな問題となることは必至である。また、為替相場の防衛ラインと見られている人民元の対米ドル為替相場は、既に1米ドル=7人民元を割り込む人民元安となり、中国本土政府の一部には、「これで再び、中国本土が輸出攻勢に出られる」との強気の発言をしているが、国際ビジネス環境や中国本土に対する貿易制裁などを勘案すると簡単にこうした思惑通りとならないであろう。そして、外国人が中国本土株を処分する、所謂、「Sell China」の動きも、筆者の表現を許して戴ければ、「国際金融市場では、意図的な動きである」として見られ始めている。ゴールドマンサックスなどは、「グローバル・ヘッジファンドが最近中国本土株を大挙して売却した。中国本土株の売り越し規模が拡大推移する傾向にある」と殊更にマーケットを煽り、著名な機関投資家たちも中国本土株売りを示唆し始めている。
これに対して、中国本土の中央銀行である中国人民銀行は、市中銀行向けに1年間の短期資金を融通する場合の金利を従来の年2.65%から年2.50%に引き下げ、「内需刺激と共に、こうした中国本土の金融機関のキャッシュフロー危機を救済する為の決断を夏休み中の北戴河シーズンに突如決定して、不安払拭に必死となっている。そして、8月16日には2,970億人民元の流動性を供給している。しかし、金融市場の不安はまだ沈静化してはいない。こうした中、中国本土の本年の経済成長率予測値も、「新規の高学歴若年層の雇用を鳩首していく為にも最低限必要な5%を達成したい」と言う中国本土政府の思惑とは異なり5%を切り、4.8%或いはそれ以下になるのではないかとの見方も出始めている。中国本土経済に対する世界的な大手投資銀行の評価は、こうして「意図的?!」に悲観的になってきており、これに合わせて、米国国内からは、国際金融市場に対して、「中国本土政府当局が利下げや景気テコ入れを通じた流動性供給を実施しても、直面する様々な問題点が中国本土には今あるため、約10年前の高速成長を取り戻す可能性は薄い」といった見方を基に、これを喧伝し始めている。以上、中国本土の不動産業界はこのように一連の激震に見舞われ、債務問題は深刻で、対外的な不安がドミノ化を引き起こしており、財政部は今後も銀行に対して、エクスポージャー管理を厳しくしていくよう注意をしている。それでも、大手銀行である中国銀行はじめ、中国本土の金融株は弱含みで動いている。
そして、上述した恒大集団による米国破産法15条による申請を受けて、「中国本土の国内では、恒大集団が発行していた債券や銀行貸し出しは期限が到来しても、政府の指示で期限を猶予している。そうして時間を稼いで処理を目指している。一方、香港市場で発行した米ドル債や米国での債務もごく一部ある。中には、恒大集団からの提案に応じない債権者もいる。破産法15条を申請することで資産の差し押さえなどを止め、債務の再編交渉を進めていく為に発動したとも見られる。これによっていきなり、倒産となったり清算したりするようなものではない。今までの経緯の中で、既に、恒大集団の米ドル建て債券の価値はジャンクに近いと認識されており、今回のことで大きな影響がある訳ではないであろう。中国本土政府が介入しているような中国本土国内での資産の処理は今まで通りに粛々と進められていくであろう」との見方も出ている。尚、軍事的対立を回避する米中は、こうした形で、経済・金融的対立を顕在化しているように筆者の目には映る。
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