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2023-08-21 00:00
第3期習近平体制の内政・外交動向③
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
8月17日、中国共産党中央政治局は常務委員会会議を開催し、現行の水害対処・災害救援と、その復旧活動について研究し、手配を行った。同会議は習近平総書記が主宰し、重要講話(内容未公表)を行ったという。いわゆる「チャイナ7」党中央指導部を構成する7人の常務委員が一堂に会する「最高幹部会議」は過去2回(2022年11月、2023年2月)開かれており、討議内容はいずれも「COVID-19」対応であったが、今回は7月から中国を襲った台風、これに伴う水害対策が初めて議題となった。また、7月31日の上将昇任式出席以来動静が不明であった習総書記も、17日ぶりに政治活動を開始したことが確認された。こうした夏季における習近平ら中国要人の長期不在を契機に毎年、避暑・休暇を兼ねた河北省の北戴河への党幹部参集、既に政治活動を引退した党・政府・軍の「長老」ベテラン幹部を交えて重要議題を話し合う「北戴河会議」(非公式会議)の開催に関する報道を中国内外で流布させるが、本年は従来より低調であったように思える。この半月間の中国の動きを細部みてみよう。
8月1日、習総書記は水害対策と災害救援活動について重要指示を出し、「人民大衆の生命・財産の安全と社会全体の安定を全力で保障しなければならない」とし、華北地区の北京市、天津市、河北省に対し、行方不明者の捜索と被災者の救助に全力を尽くし、負傷者の治療と犠牲者遺族への慰問を行い、死傷者数を最大限減らすように要求していた。重要指示を受けて李強総理(ナンバー2の政治局常務委員)も「習総書記の重要指示の精神を真剣に徹底せよ」とし、国家洪水旱魃対策本部(中国語:総指揮部)や応急管理部、水利部など関係部門に対し、被災地における捜索・救助・避難活動を全力で指導・支援し、正常な生産活動・生活秩序を早急に回復するように指示した。7月に入って首都や近隣の省・市が被災地域となり、本年の「北戴河会議」開催は危ういとみていたら、翌3日、習総書記の委託を受けて蔡奇党中央弁公庁主任(ナンバー5の政治局常務委員兼書記処筆頭書記)が河北省北戴河で、同地において避暑休暇を楽しむ科学技術者57人へ慰問を行ったことから「北戴河会議」開催のための要人参集を匂わせることになったのである。新華社の報道によれば、蔡奇主任の慰問には李幹傑党中央組織部長(政治局委員兼書記処書記)も同席しており、この3~4月に判明した党要職「新人」2人へ慰問活動は割り振られた模様である。他方、習総書記、李総理、蔡主任、李組織部長以外の中国要人の多数は全く動静が不明であったが、例外の要人2人の活動は中国でクローズアップされていた。
先ず新任の副総理である張国清(政治局委員、前遼寧省党委員会書記)の水害対策活動は目覚ましかった。8月1日、北京市内を視察して対策を指示した張副総理は5日には天津市内に移って活動し、さらに6日には黒竜江省、翌7日には河北省をそれぞれ視察したのである。8日に北京で開かれた国務院常務会議(李総理主宰)で、恐らく張副総理の状況報告を聴取した国務院首脳部(総理、副総理、国務委員)による今後の水害対策の「ブレーンストーミング」を経て今度は、もう一人の新任の副総理である劉国中(政治局委員、前陝西省党委員会書記)が水害対策活動の最前線に立った。8月11日、河北省、北京市を視察して対策を指示した劉副総理は12日に吉林省、翌13~14日には黒竜江省をそれぞれ視察して水害対策とともに、秋季の農業収穫作業や被災地における防疫活動も指示したのである。しかしながら、習総書記の「側近」であった丁薛祥(前党中央弁公庁主任)筆頭副総理や何立峰副総理(前国家発展改革委員会主任)の2人は水害対策活動で全く目立たなかったことから、やはり「北戴河会議」は開催されており、習総書記の政策立案や問題討議に付き従った可能性が高い。8月16日、3月の初会議以来、5か月ぶりに北京で開催された国務院第2回全体会議(李総理主宰)には、国務院首脳部8人(外遊中の李尚福国防部長、外交部長を更迭された秦剛の国務委員2人欠席)に加え部・委員会26組織のトップである「閣僚」らが出席し、党中央の決定実現を目指し、ハイクオリティ(中国語:高質量)の発展を推進し、行政の効率化を進め、本年全体の目標・任務の実現が強調された。そして翌17日、最初に延べた中国共産党常務委員会会議の開催と相成ったのである。
以上中国の内政動向をみてきたが、8月18日には習近平国家主席(党総書記)の外遊も発表され、同21~24日に南アフリカを国事訪問するとともに、首都ヨハネスブルグで開催される第15回BRICS首脳会議に出席し、中国・アフリカ首脳対話も行うとされた。本年、習主席の外遊は3月のロシア訪問以来2回目となるが、過去10年の外遊動向と比較すると極端に少ない。ここ4年間の「COVID-19」対処を割り引いても、習主席の足元が内政へ「荷重」ロードがかかっていることは否めず、「内憂」への立ち位置が際立っていると思われ、帰国後の水害被災地視察などの動向が注目されよう。最後に本年8月12日は、1978年の日中平和友好条約締結45周年の節目であったが内外の論調は低調であった。一方、8日には台湾を訪問した麻生自民党副総裁が、台湾海峡の平和と安定について「強い抑止力を機能させる覚悟が求められる。(中国と)戦う覚悟だ」と発言し、18日には米国で日米韓の3国首脳会談が行われ岸田首相(自民党総裁)が参加して東アジアにおける関係強化が確認された。しかし、28~30日には山口公明党代表の訪中(恐らく政党間交流の一環)が予定され、翌9月にはインドネシアで開催されるASEAN関連首脳会議(バイデン米大統領は欠席か)に合わせ、岸田首相と中国の李強首相との「日中首脳会談」も調整が始まったという。一見、首脳外交と政党間交流とを巧みに使い分けた硬軟両様の対中外交の展開にもみえるが、「ちぐはぐな日中関係」(13日付毎日新聞「時代の風」における高原明生東大教授の指摘)の一面を象徴していると小生はみており、今後の中国の外交・軍事動向も注目される。
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