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2023-03-18 00:00
第3期習近平体制の人事的特徴②
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
2022年10月の党大会に続き、2023年3月、いわゆる「両会」(全国人民代表大会、全国政治協商会議)が開かれ、国家・政府機構の指導部人事が決定された。基本的には、昨年の党大会の人事配置から概ね予測可能なものであったが、異例な部分もみられたので以下、紹介していきたい。
1 いわゆる「チャイナ7」党中央政治局常務委員の序列を踏襲
1 習近平党総書記・中央軍事委員会主席→国家主席、国家中央軍事委員会主席(再任 69歳)
2 李克強→李 強国務院総理、同党組書記(新任、前上海市党委員会書記 63歳)
3 栗戦書→趙楽際全人代常務委員会委員長、同党組書記(新任、前党中央規律検査委員会書記 65歳)
4 汪 洋→王コ寧全国政治協商会議主席、同党組書記(新任、前党中央書記処筆頭書記 67歳)
5 王コ寧→蔡 奇(党中央書記処筆頭書記 66歳 前北京市党委員会書記*国家・政府機構の配置無し)
6 趙楽際→丁薛祥国務院筆頭副総理、同党組組員(60歳*党中央弁公庁主任の兼職、あるいは後任不明)
7 韓 正→李 希(党中央規律検査委員会書記 前広東省党委員会書記 66歳*国家・政府機構の配置無し)
今回、邦字紙の報道はナンバー2の李強総理とナンバー6の丁薛祥筆頭副総理、ナンバー4の王コ寧政治協商会議主席(政治局委員から落選した胡春華同副主席)に傾注しながら、「法治」重視を唱える習近平体制下、ナンバー3の趙楽際全人代常務委員会委員長の存在を軽視する等「片手落ち」の側面が目立った。また、①「国家主席代行」を務めることになる国家副主席に前ナンバー7の韓正(前任は王岐山)が就任したこと、②全人代副委員長に李鴻忠(政治局委員 前天津市党委員会書記)、張慶偉(前湖南省党委員会書記も異動は配置後公表)が就任したこと、③司法機関として最高人民法院院長に張軍(前最高人民検察長)、最高人民検察長に応勇(前副検察長、元湖北省党委員会書記)がそれぞれ就任したことも興味の対象ではなく、ほとんど話題にならなかったのである。
2 国務院首脳人事
李強総理以下、4人の副総理、5人の国務委員は全員入れ替わった。これで従来の政策の継続性や安定性が維持されるのか小生は疑問であるが、第3期習近平体制では問題にならないようである。李総理を補佐し、首脳部の意見をまとめる筆頭副総理に就いた丁薛祥は習近平党総書記の「秘書役」として党務専従者、次席副総理の何立峰は国家発展改革委員会主任からの昇格人事であるが、その「行政」手腕は未知数である。他の2人の副総理は張国清(前遼寧省党委員会書記)、劉国中(前陝西省党委員会書記)と昨年、党大会後に地方から中央へ異動してきた人材であり経験は少なすぎる。
副総理と同格とされる国務委員には李尚福国防部長(新任 中央軍事委員会委員 前装備発展部長で宇宙開発担当)、王小洪公安部長(再任 党中央書記処書記兼政法委員会副書記)、秦剛外交部長(新任)の国防・治安・外交のトップに加え、呉政隆国務院秘書長(新任 前江蘇省党委員会書記)、タン(言べんに甚)胎琴(新任 女性 前貴州省党委員会書記)が就任した。国務委員の前者3人は各分野の専門家であるが、後者2人は先述した副総理2人同様、党大会後に地方から中央へ異動してきた人材である。しかも呉秘書長と李総理の人間関係は不分明であり、タン国務委員の担当は未発表であり、今後の活動状況が注目されよう。
3 国務院閣僚人事
100%の完全異動が実現した国務院の首脳人事に対し、これを支える26の部・委員会等のトップである閣僚人事は再任が目立った。少数の例外として、何立峰国家発展改革委員会主任の副総理就任に伴う後任には鄭柵潔(前安徽省党委員会書記)が抜擢されたが、地方からの異動は閣僚配置後の発表となった。これは既に2022年の党大会後、閣僚交代人事が頻繁に行われ、その流れを覆すような不祥事や重大事故・事件が無かったためである。また、首脳人事がほとんど「素人」集団で固められた現状からすれば、主要閣僚(特に経済・金融担当)には継続性や安定性を求めた可能性が高い。他方、2019年以降の「COVID-19」蔓延に対応した馬暁偉国家衛生健康委員会主任の再任には違和感が残り、今後5年間の任期内には人事異動が行われるであろう。
4 まとめ
昨年の党大会以降、今回の「両会」に至る人事を分析してみて小生は、現在の中国は依然として「内憂外患」に苛まれており、だからこそトップの習近平党総書記・中央軍事委員会主席・国家主席は党内論争を回避するため「異論」を排除し、その周辺を側近と「イエスマン」、無名の閣僚集団(主としてテクノクラート)で固めたが不安でたまらないようにみえる。したがって、3月20日からロシア訪問に出る習主席は、事前に出したロシア・ウクライナ「和平案」を手土産にプーチン・ゼレンスキー両首脳との「橋渡し」を試みて「外患」治癒にあたるのであろうが、結果は未知数である。また、経済減速等に伴う「内憂」には、一部香港報道によると、現行の党中央政法委員会を改組して「党中央内務委員会」(仮称)を設置して対応を強化するとの観測がなされた。今回の国家・政府機構人事を経て党中央政法委員会の陣容は、以下のようになった;
書 記:陳文清(党中央政治局委員 前国家安全部長)
副書記:王小洪(党中央書記処書記 国務委員兼公安部長)
委 員:陳一新(国家安全部長 前政法委員会秘書長)
賀 栄(司法部部長 前最高人民法院副院長 女性)
張 軍(最高人民法院院長 前最高人民検察長)
応 勇(最高人民検察長 前副検察長 元湖北省党委委員会書記)
今後、これらメンバーに加え、人民解放軍や武装警察部隊の将官、ひいては「復権」を目指す応急管理部隷下の要員を加えるのかが注目される。
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