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2023-02-07 00:00
中国の人口が61年ぶりに減少した原因は「新型コロナ」だけなのか
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
中国の人口が61年ぶりに減少したという。さて、まずは今から61年前は何があったのかということを考えてみる。61年前というのは、1962年である。中華人民共和国派1958年より大躍進政策をしていた。「大躍進」という言葉の、辞書による説明は次のとおりである。「中国で 1958年から始まる第2次5ヵ年計画の初年度に行なわれた政策。1958年毛沢東国家主席によって提起された社会主義建設の総路線の主導のもと,いわゆる経済の『大躍進』と人民公社設立の全国的な大衆運動が展開された。総路線,大躍進,人民公社という経済政策,方針を称して『三面紅旗』と象徴的に呼ばれた。1958年の大躍進は自然条件にも恵まれ,高揚した全国的大衆運動のなかで,農工業生産の大幅な増産が達成された。象徴的なのが鉄鋼生産運動で,土法(在来の方法,技術)により全国的に高炉が建設され,多くの人間が動員された。しかし,製品の質が悪く,そのうえ,工業と農業,工業でも鉄鋼と他部門とのバランスが崩れるという結果を招くことになった。この間,彭徳懐による批判(→廬山会議)など党内闘争もあり,加えて自然災害,ソビエト連邦との経済断交,政策運営上の誤りなどによって経済的にも破綻をきたし,大躍進は途中で挫折した。その後文化大革命によって一時再生したが,いわゆる四人組失脚後,無謀な試みとして否定された。」(ブリタニカ国際大百科事典小項目事典)
結局大躍進政策は数千万人の餓死者を出す惨憺たる大失敗に終わった。1959年のあるデータでは大躍進政策による餓死者数は3635万人であったという。犠牲者数には諸説あるが、中国統計年鑑2017年版ですら1625万人もの人口減が確認できるほどの大飢饉であった。中国共産党の内部文書には1958年から1965年の間に4500万人が大飢饉で死亡したと記録されている。サミュエル・ジョンソン賞を受賞したフランク・ディケーターは大躍進政策のための中国人死者は7000万人を越えると指摘している。国内で起こった混乱や飢餓で産まれなかった者も含めると7600万人との分析がある。農村部では特に栄養失調者が相次ぎ、食人行為が横行するほどの飢餓を生む大失敗に終わった。毛沢東政権下の死者の合計が1億人とする説も出現した。毛沢東は1959年4月に国家主席を退任し、劉少奇が後任となる。 1962年1月の中央工作会議(七千人大会)で、劉少奇は「三分の天災、七分の人災」と大躍進の原因を評価した。毛沢東がただ一度の自己批判を行ったのはこの会議の席上である。中国共産党中央委員会主席だった毛沢東賛美教育は変わらず、劉少奇がトップとして大躍進政策の尻拭いを担当した。しかし、1966年には再びトップの地位を得ようとする毛沢東の扇動によって、文化大革命が起きた。この少なくとも1625万人、多ければ7600万人の死者を出した大躍進政策によって、中国の人口は減少したのだ。今回、「それほどの大惨事」が中国で発生した。
中国の人口減少に関する報道で、「中国総人口61年ぶり減少『国民を人間扱いしていないから当たり前』コロナ禍の影響も指摘…“震源地”武漢は“日常”取り戻す」という見出しがあった(2023年1月17日FNNプライムオンラインhttps://news.livedoor.com/article/detail/23551460/)。簡単に61年ぶりというような書き方をすること自体が、日本のマスコミとして中国に何があったかなどの事を書かない「中国寄りの報道」であるということが言えるのではないか。このようなことで、「正しい報道」もっと言えば「正義の実現」がしっかりとなされるのかは、かなり疑問であろう。日本の多くの人々は「このような言論空間を作り出すマスコミ」により情報を得ているということをまずは知るべきであろう。そのうえで、今回の習近平による政策は、毛沢東による「大躍進政策」と同じような、「中華人民共和国の人々を自分のメンツと共産党政府の中の権力争いの犠牲として見殺しにした」ということを意味している。単純に、習近平の時代になって「一人っ子政策」を終わらせた。その為に、人口は徐々に増加傾向にあったはずである。その人口を凌駕するほどの「死者数」を出したということになるのである。習近平政権の共産党政府は「人口が減少する」というよりは「コロナウイルスやそのほかの病原菌によって弱い人間が淘汰される」ということを好ましく思っているということを意味しており、また、その為に「いびつな少子化を無くすことを考えている」ということである。もちろん国家の発展と言ことを考えた場合は、年齢別人口分布が、年寄りが少なくなり、子供が多い方が良いのであろう。しかし、実際に存在する人を「見殺しにする」というか「死に瀕している人々を見捨てる」ということが政府として許されるのかどうかはかなり大きな問題ではないか。しかし、それに抵抗する力もあまりなく、「ゼロコロナ反対デモ」くらいしかない。それでも習近平政権はなくならないというのが現状どころか、春節の演説では、習近平派「ゼロコロナ政策が間違っていなかった」と平気で言っているのである。
そもそも「人口が減った」ということは、国家にとっては大きな問題である。間違いなく日本などは「少子化」によって様々なことが問題になっている。年金問題もそうであるし労働人口が減っているということ、もっと言えば、景気問題であってもすべて子供が少なくなっているということ、つまりは「人口減」が問題になっているのである。そして人口減になったということは、「政治がおかしい」ということになる。これはもちろん日本も韓国もそうであろう。ある意味で「人間が自然な形で生きていない」ということを意味しているのではないか。それが良いことなのであろうか。中国に関しては、好き嫌いで言えば、人口減でも構わないのであるが、しかし、そのような政治をしている人々にそのまま存在させているということが、日本に大きな影響を与えないように考えなければならないのではないか。
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