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2022-12-25 00:00
第3期習近平体制の内政動向④
松本 修
国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
12月25日早朝、国家衛生健康委員会は、本日から毎日の「COVID-19」感染状況に関する情報を発表せず、今後は中国疾病管理センターが関連情報を発表し、業務の参考と研究の使用に供するとした。確かに国家衛生健康委員会のHPから日々の感染情報項目が削除され、前日24日に発表された23日のデータ等過去の情報のみが確認出来た。既に12月14日、国家衛生健康委員会は無症状感染者数の発表を停止しており、それに次ぐ措置となった。最後のデータ公表によれば、12月23日現在、広東省1,737人、北京市580人、福建省338人をはじめとして中国本土25地域で4,128人の感染者が発生し、総計39万7195人となっており、40万人台到達目前となっている。このままいけば中国本土の感染者数は、2021年末の10万人突破から1年間で4倍増となる可能性が高い。また、死者数も5月末、クラスターが発生した上海市で確認されて以来約6か月間増加しなかったが11月19日、北京市で1人死亡すると相次いで死者が出て12月20日現在、新たな死者数15人(北京市10人、四川省2人、河南省1人、重慶市1人、山東省1人)を確認して総計5,241人となっているが、感染者数の急拡大に比してあまりにも少ないようにみえる。
12月23日付の「朝日新聞DIGITAL」によると、中国政府が21日に開いた内部会議の議事録が出回り、12月1~20日の国内の新規コロナ感染者数が、総人口の約18%に相当する2億4800万人に達するとの推計が示されたという。同会議の開催動向は22日、中国共産党政法委員会のHP「中国長安ネット」で確認出来たが、こうした細部のデータは削除されていた。会議自体は国務院「COVID-19」対応機構の医療救援組による全国TV電話会議であり、馬暁偉国家衛生健康委員会主任(同機構総合組組長)が講話を行い、新段階に入った防疫状況では習近平総書記が重要指示を何度も行っており、閉幕したばかりの中央経済工作会議における防疫政策の高度化・調整、感染流行期への順調な対応、平穏な段階移行と社会秩序の安定確保について重大な措置を採ると指摘したが、具体的な施策は明らかではない。では、12月15日から16日まで開催された中央経済工作会議はいかなるものであったのか、細部みていこう。
今回の中央経済工作会議は、12月6日の中央政治局会議の決定を受けた会議であり、「安定の中で発展を求める」(中国語:穏中求進)ことを基調とし、防疫活動と経済社会の発展、及び発展と安全のバランスの両方のバランスをとり、成長・就業・物価の安定を際立たせ、重大なリスク発生を有効に防止・緩和すると強調した。中国共産党の習近平総書記が重要講話を実施し、李克強総理が2023年の経済工作の具体的な配置を行い、次期総理と目される李強が総括講話を行ったという。中央経済工作会議後の12月20日、11月22日以来1カ月ぶりに開催された国務院常務会議で李克強総理は、8月に打ち出された「経済安定化包括政策」(中国語:穏経済一覧子政策)の継続・深化を主張し、経済基盤の強化、合理的な経済運行の維持、重点商品の供給確保・価格安定、一般大衆の生活保障、就業安定など民生工作の継続を訴えた。しかしながら、こうした旧来の政策の継続・深化で、現在の中国の「内憂」、あるいは「難局」と言ってもいい内政の停滞を打開できるのだろうか。12月11日付拙稿の主張を繰り返すが「問題はその実行役と具体的な政策である」といえ、総括講話を行ったとされる党内序列ナンバー2の李強の存在感があまりに薄いのが最大の問題点と小生はみる。ところが、中国当局の危機感も薄い。12月23日から24日まで開催されたのは「COVID-19」対策会議ではなく、中央経済工作会議に続く「中央農村工作会議」であった。同会議には習近平、李克強総理、李強、王コ寧、韓正副総理、蔡奇、丁薛祥が出席し、習近平総書記が「農業強国」建設加速を主眼にした講話を行い、李克強が同会議を主宰した。奇異なのは出席メンバーに名を連ねていなかった胡春華副総理(農業担当)が総括講話を行い、「三農」(農業・農村・農民)工作の推進を強調し、特に「当面は農村における防疫活動を重点的に行い、各地方は責任を厳格にとり、帰郷職員・労働者と学生の防疫サービスを強化し、農村における高齢者・幼児・病人・障がい者・妊婦など重点人員への医療保障を強化し、農村居住者の健康と正常な生産・生活秩序を最大限維持せよ」と訴えたのである。これは、中央経済工作会議で強調された「防疫活動と経済社会発展の両方のバランスをとる」施策の表明であり、農業部門における具体的な対策提起ではないか。ただし、ヒラの中央委員でしかない胡春華にはもう実権が無く、後任の農業担当副総理へ業務を引き継ぐしかないのが現状である。これは衛生・文教担当の孫春蘭、経済貿易政策担当の韓正の両副総理の実務にも言えようが、全く不分明である。
2023年1月20日、中国は「春節」(旧正月)を迎えるが、このための「民族大移動」とされる「春運」(旧正月に際した帰郷交通)が7日には始まる(2月17日まで)。そして12月24日、交通切符の発売が開始されたが、中国当局には3年前、「COVID-19」発生の教訓が残っていないのか。今後の習近平指導部の対応が注目される。
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