ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2007-08-31 00:00
連載投稿(5)「エネルギー安保」「共同体構築の全体構造」各作業部会の印象および総括
廣野良吉
成蹊大学名誉教授
「東アジア・エネルギー安全保障協力」作業部会の報告書が指摘するように、資源の多様化は、エネルギー需給のバランスの確保、エネルギー効率の改善と並んで、東アジア諸国が直面している主要課題の一つであるにもかかわらず、環境にやさしいエネルギー資源への多様化の進展は実に遅い。その主要な理由は、第一に新しい技術開発が資金的、人的制約により進まないこと、第二に多国籍企業による技術移転が遅々として進まないこと、第三に原子力発電の運転と使用済み核燃料の廃棄に関し、安全性への疑念が消えないこと等にあるとされる。しかし、より一層重要な理由は、多くの途上国において、国民生活の安定のために化石燃料の市場価格が補助金により低位に抑えられていることにある。
そこで、本作業部会は、地域協力を通じたエネルギー資源の保全・多様化の推進とか、エネルギー資源の活用に関する情報、技術、ノウハウの共有とか、再生エネルギー資源の技術開発での協力の強化等というような一般的な政策提言ではなく、再生エネルギー資源への転換を促進するために、東アジア諸国でどのような具体的な振興策(化石燃料助成金の削減目標、今後5年、10年毎の再生可能なエネルギーへの転換数値目標、エネルギー開発投資に占める再生可能なエネルギー開発投資の割合等)を国別計画ないし二国間・多国間協力として提言してほしかった。それが見えていなかったのは残念である。アセアン域内天然ガス・パイプラインの建設促進は具体策であるが、環境に優しいとはいえ、未だに化石燃料への依存であることに変わりはない。
特に、アジア太平洋地域の16カ国の第1回エネルギー担当大臣会議が、NEAT会合の翌日に同じシンガポールで、2009年夏までに省エネの数値目標と行動計画を国別に設定・報告することを盛り込んだ共同声明を発表しており、かかる大臣会合へ建設的かつ新鮮な「エネルギー資源多様化」ないし「再生・クリーン・エネルギーへの転換」に関する政策提言を提出する役割を期待されているNEATが、その職務を全うし、先取りできなかったことは甚だ遺憾である。また、本作業部会の報告書で原子力発電への関心が高まっている東アジア諸国の期待に応える政策提言がなかったことも遺憾である。もちろん、Better Late than Neverであるが故に、今後の政策提言を期待したい。
最後に、「東アジア共同体構築の全体構造」作業部会の報告書については、非伝統的な安全保障分野における東アジア地域協力は、(1)テロ対策、(2)公海上の海賊対策、(3)感染症対策等と(4)環境・地球温暖化対策はともにG8の場でも取り上げられている重要課題であるが、前二者はいわゆる特定地域安全保障上の課題であるのに対して、後二者は地球規模の課題であり、その性質上別々に取り上げたほうがよかった。「環境保全、地球温暖化防止・適応」を主題とする作業部会の設立という第5回総会における小生の発案は、この個別的印象の当然の結果である。
以上のとおり、小生の今次NEAT総会についての全般的印象と各作業部会の報告書についての個別的印象からもわかるように、アセアン+3首脳会議へのNEATの有用性と効果性を高めるために、今後の作業部会の政策提言と運営方法には、多くの改善策が不可欠と考える。この改善策が合意を見るには、NEAT各国のシンクタンクを代表する「国別代表者会議(CCM)」による個別の審議と最終的な合意が必要ということから、今すぐ実現するとは思わないが、今次総会で小生が提案したように、直ちに改善のための検討を始めてほしいと考える次第である。(おわり)
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会