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2022-11-04 00:00
「シャンシャンと終わらせないと胡氏の意地」
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「シャンシャンと終わらせないと胡氏の意地」これは、三重県の山本武夫さんの作品である(2022/10/25朝日川柳)。「胡氏」とは、中国の胡錦涛氏。2002年から2012年まで中国共産党総書記、2003年から2013年まで中国国家主席、2004年から2012年まで中央軍事委員会主席を歴任し、1992年から2012年まで中国共産党政治局常務委員をつとめた、かつての中国共産党の最高権力者であった。
一句は、10月22日の中国共産党大会最終日閉幕式での一幕を揶揄したもの。習近平総書記の左手に座っていた胡氏がその左の席の栗戦(りつ・せん)氏に「書類を取り上げられ?」若い係官らしい男に促されて、不承不承?立ち上がって二人がかりで場外に引率されていく情景がTV放映され、世界中に発信された。
北京の人民大会堂で22日に開かれた中国共産党大会の閉幕式で、習近平(シーチンピン)総書記の左隣に座っていた胡錦濤(フーチンタオ)前総書記(79)が、途中退席した。理由は明らかになっていないが、退席を拒んでいるように見えた胡氏が係員に促され、腕をつかまれた状態で壇上から離れた様子が波紋を広げているのである。
10年ひと昔とは言うものの、かつて位人臣を極めた人の、それゆえにこそ現最高権力者の向かって右に座席が与えられたのであろう人の、意味不明に退場する姿はさまざまな憶測を呼んだようである。その意味では上の川柳一句は、現最高権力者によって「一切の権力を剝ぎ取られた先輩」という猿山の代替わりを邪推して詠んだ一句である。
たしかに、胡氏は若い係官に促されて顔をしかめ、「不満そうな顔つき?」で立ち上がり、習氏に何かささやいたようだが習氏は多少の落ち着かない動きはしたものの、胡氏の顔に目をやることもなく、胡氏の後ろから触れた手は習氏の体ではなく椅子のようであったからスキンシップにはなっていないようだった。
歩き出した胡氏は習氏のとなりに座っていた李克強首相には肩に手をやって、激励するような姿に見えたが、これはよもやの続投または権力委譲があるかもしれなかったはずのNo.2李克強氏が、自分と同じ無冠になることへの激励のサインのようにも見えたのだが、上記川柳作者はこのように一場の無音の動画映像を想像たくましくしたのである。
事実はそうではなくて、ただ胡錦涛氏がもはや認知症に罹患していて、あるいはトイレに行きたくなって、かの国の政治劇の冗長さからとても耐えられないのではないかという習執行部の思いやりから、しずかな医務室に保護、または手洗いに導いたということだったのかも知れない。
世界中に流された無音のこの映像、各国の人々はどう記号論的にこれを読み取ったのだろうか。国別に整理してみたら面白い国際関係論のデータになったのだろうと思ったのだが・・・。
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