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2022-10-07 00:00
「円安」に見る日本経済の悪循環
鈴木 馨祐
衆議院議員
あちこちで物の値段が上がり、物価の高騰が見られています。一方で、原油価格や穀物など、国際市場においては価格がウクライナ侵略前の水準に戻ってきています。これが意味するところは、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料や食料品を輸入に頼っている我が国において、現在の物価の高騰の大きな要因として、円安の影響が大きいということです。最近の円安基調の要因としては、主に貿易収支に伴う実需を含む円売りということと、キャリートレードなどの金融的な動きにつながる日米等の短期金利差の拡大の二つが挙げられます。
政策金利の違いということで述べれば、アメリカにおいては雇用の流動性が高く、人材の争奪戦が常に繰り広げられている結果として、様々なレベルにおいて賃金水準が極めて高くなっています。一方の日本においては、労働市場改革が進まず、またスタートアップのような企業の新陳代謝が起こりにくいため、正社員の多くが終身雇用に近い状況にあって、正社員の世界の中にいる方々にとって安定はしている一方で、一部の職種を除いて企業が人材確保のために高い賃金を払うということになっておらず、全体として収入が増えていません。結果として、日本においては物価上昇がいわゆるデマンドプル型でなくコストプッシュ型になってしまっていて、景気の過熱を抑えるために金融引き締めをしているアメリカ等と対照的に、日本においては金融政策の引き締めに転じづらいという環境があります。
その結果としての円安についても、経常収支が黒字である以上経済的にはプラスなわけですが、生活している身からすると、その負担感は厳しいものがあるので、そこに対しては国民の皆さんに負担いただいている税金や将来世代の借金から補助金という形で支出して補っているという構図となっています。今回の予備費からの3.5兆円の支出はまさにこうした性質のものです。
要すれば、変化の時代に経済成長するための国内の構造改革が出来ていないことで、金融政策が縛られ、為替ルートで来ているしわ寄せを財政で補うという悪循環となってしまっているのが今の日本の状況です。このような、日本の世界における購買力の低下を将来からの借金で補填するような状況がいつまでも持続可能なはずはなく、成長力強化のために必要な労働市場、金融資本市場等における抜本的な改革を一刻も早くできるか否かが、日本の将来の成否を握っていると言っても過言ではありません。たとえ、当初痛みを伴うものであったとしても、将来的には経済成長という形で国民一人一人に良かったと思ってもらえる、そんな改革を進るのが政治の責任です。そのような未来のための政治を実現すべく、微力ではありますが、引き続き頑張ってまいります。
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