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2022-10-05 00:00
(連載1)日本がとるべき「新しい資本主義」の姿について
真田 幸光
大学教員
最近、韓国や中国本土、東南アジアの報道を現地語や英語で聞いていると、「日本経済の没落」をはっきりと、強く指摘する傾向が強まっています。「愛国者・真田」としては、正直に言って、とても不愉快な気持ちになります。しかし、これらの報道の根拠は、国際機関のデータ(2021年基準)を基にしつつ、例えば、下記15点を厳しく指摘しています。何とも、反論しにくい意見が出てきていることは間違いありません。
1. 潜在的な労働力・潜在的な消費力の前提となる人口は126百万人弱と世界第11位となっている。
2. 日本の名目GDPは4兆9,374億米ドルと米国、中国本土に次いで世界第3位ではあるが米中両国には、その差を広げられている。
3. 日本の一人当たりGDPは39,339米ドルと韓国などよりも低い世界第28位となっている。
4. 日本の経済成長率は1.62%と世界第157位となっている。
5. 日本の輸出規模は7,560億米ドルと世界第5位と、米中ドイツオランダよりも低くなっている。
6. 日本の輸入規模は7,690億米ドルと世界第4位と米中、ドイツよりも低くなっている。
7. 日本の貿易規模は1兆5,250億米ドルと世界第4位となっている。
8. そして、経常収支は黒字を維持しているものの、貿易収支は130億米ドルの赤字となっている。
9. 「鉄は国家なり」の鉄鋼の生産量は83,186千トンと中国本土、インドに続いて世界第3位となっている。
10. グローバル物流の一つの担い手となる造船は、10,726総千トンと中国本土、韓国に続いて第3位となっている。
11. 自動車生産台数は7,847千台と中国本土(26,082千台)、米国(9,167千台)に次いで世界第3位となっている。
12. 半導体の生産シェアは15%と韓国の23%、台湾の22%、中国本土の16%に次いで世界第4位となっている。
13. こうした中、日本の労働生産性は78,655米ドルとOECD38カ国中28位に甘んじている。
14. 労働分配率は大企業が54.9%、中堅企業が67.8%、中小企業以下が79.1%、そして日本全体では50.1%と、米国平均の52.8%、ドイツ52.3%、英国50.5%、フランス50.2%と遜色はなく、データで見る限りは、日本の労働生産性の低さはやはり労働効率の低さ、付加価値創出の弱さにあると言わざるを得ない。
15. そして、日本人は未だに、「日本の技術力は高い。日本の労働者の質は高い」と言い張っているが、上述したように実力を落としてきていることは事実であり、現状認識がきちんと出来ていない国となっている。しかも、日本人は今、新たなビジネスに果敢にトライしていく進取の精神にも欠け始めており、特に、若年層にトライしていく精神が欠けていると言わざるを得ない。
しかし、世界経済の基軸である米英の秩序、即ち、英語、米ドル、英米法、ISOを軸としたモノづくり基準、米英会計基準が存続するということを前提として、今のところ国際社会での日本の立ち位置を考えていけば、日本経済に特段の不安はないとも言えます。その上で、米ドルの補助通貨として日本円が比較的安心、安全の通貨であると評価されていけば、上述したような日本経済の地盤低下が顕在化していても日本経済は大丈夫であると私は考えています。
一方、最近は上述した言語、通貨、法律、モノづくり基準、会計基準に関連した米英の世界標準が崩れていく危険性も意識していかなくてはなりません。これを前提とすれば、日本経済の先行き、日本の先行きにも懸念が生じると言わざるを得ません。欧米のみならず、中国本土や韓国、そして東南アジアなどからも最近しばしば指摘されている日本の賃金水準と労働生産性について、ここで、ちょっと考えてみたいと思います。
先ず、日本の労働者1人当たりの平均現金給与総額を見ると、2021年は2020年よりも0.3%増の月額31万9,528円であったと報告されています。一方、名目賃金から物価変動の影響を除いた賃金の動きを示す実質賃金指数は前年と横ばいで、賃金の伸びを物価上昇が帳消しにした形となっています。そして、比較的科学的、客観的であり中立的な国際機関とされるOECDのデータから、日本の現状を見てみると、2020年の平均賃金上位10カ国には遠く及ばす、加盟35カ国中(*イスラエル、コロンビア、コスタリカ除く)22位に日本は甘んじています。2020年の日本の平均賃金を米ドル換算すると、3万8,151米ドル(約447万円)となっており、例えば米国の5分の3よりも少なく、世界第18位の韓国(4万1,960米ドル)やOECD加盟国全体の平均である49,165米ドルをも下回っています。日本より順位の低い国は、スペインやイタリア、ハンガリー、チリ、メキシコなど、経済や国内情勢の安定していない国ばかりといっても過言ではなく、そうした国よりは少しはましであるといった水準に甘んじています。そして、上述したように、労働分配率が世界の主要国水準とあまり変わりないとすれば、企業がきちんと従業員に富の分配をしていない訳ではない、特に上述の14で示したように、日本の場合、中小企業は大企業よりも多く従業員に賃金として富を分配していることから見ると、日本の賃金水準の低さ、労働生産性の低さは、やはり付加価値の低さから生じていると考えざるを得ません。(つづく)
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