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2022-09-21 00:00
(連載2)エリザベス女王の国葬は大英帝国の残像
中村 仁
元全国紙記者
安倍元首相の在位は、憲政史上最長の8年8か月です。旧統一教会を恨んだ男性に狙撃、死去という非業の死を遂げました。日本は敗戦国ですし、安倍氏の政治活動も国葬も「戦後政治史の一断面」と思います。歴史な位置づけ、国家の伝統はそれぞれの国によって違いますから、それぞれの国葬はあっていい。それにしても、「英女王の優しさを忘れない」(日経)、「世界が別れ。英国の威信を内外に」(読売)、「英全土で2分、黙とう」(朝日)が女王の国葬でした。
安倍氏の国葬には、世論調査によると、過半数以上の有権者が反対しています。それを意識してか、岸田首相は弔旗、弔意の表明も求めない。旧統一教会と岸・安倍三代にわたる関係、特に安倍派に目立つ選挙協力、旧統一教会に対する不透明な処理への不信があるのでしょう。 国葬の決定にしても、あっという間に決まり、麻生・自民党副総裁の強い意向があったとか。岸田首相の政治思想の座標軸があるのか分からないうちに決まってしまった。保守派の取り込みを狙ったとか。
ネット論壇では、「反安倍派の人たちが反対。左派系メディアが煽っている」との投稿もあります。メディアが煽ったっだけは国葬反対が60、70%の高率に届かないでしょう。政権支持率もこれほど急落しないでしょう。安倍氏の外交、安全保障政策には歴代の首相には見られなかった実績はあるにしても、最も近い関係を築いたのはプーチン露大統領(ウクライナ侵略戦争)、トランプ・前米大統領(選挙結果の無視、国家極秘文書の私蔵疑惑)というのでは、再評価が必要です。アベノミクスの帰結の一つである「止まらぬ円安」で、ドル建てのGDPは30年ぶりに4兆㌦を割り込みました。世界のGDPの15%を占めていたシェアは4%に縮みました(OECD調査)。日本の地位の急激な低下です。
世界的な投資家であるジム・ロジャーズ氏は「日本は紙幣を無制限に刷ってきた。借金を返すために公債を発行するという悪循環が抜け出せない。悪循環をさらに悪化させたのがアベノミクスの金融緩和だ」(月刊文春)と酷評しています。そこまで言われているのです。「憲政史上最長、非業の死」を錦の御旗にして、岸田政権は政治的な思惑から、急いで国葬に踏み切った。死者を弔うためには葬儀は必要であっても、国葬にするのか国民葬にするのか。説明不足でしたし、拙速な決定でした。(おわり)
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