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2022-09-07 00:00
核戦争への準備
古閑 比斗志
医師
日本は唯一の核被爆国であり、これまで核戦争の想定で訓練をしたことがない。核戦争が発生したらすべてがおしまいであるかのように考えている節がある。確かに核爆弾の直撃を受ければ、その瞬間に蒸発することが出来て痛みも感じないであろう。核爆発による数千度の熱と電磁放射線と衝撃波のエネルギーがすべての生き物を破壊する。しかし直撃を受けなければ生き残ることは可能である。核爆発により飛散した核物質は半減期が短い物が多く、2週間もたてば人が生きていけるほど外部放射線量は低下する。2週間をどう生き延びるかであるが、外部からの放射線(α線・β線・γ線)は遮蔽することである。そのために地下か水中に逃げることが外部被曝を防ぐ手立てである。シェルターに入る前にはまずシャワー等で除染をする。衣服には放射性物質を含む粉塵が大量に付着している。またシャワーで皮膚や毛髪に付着した放射性物質を落とす必要がある。シャワーの後、汚染されていない衣服に着替える必要がある。
核爆発後に発生した核物質を、呼吸や飲食により体内に入れることが最も危惧される。内部被ばくである。放射化した粉塵は、マスクを着用する事である程度内部被ばくを防ぐことが出来る。内部被ばくは、放射線量が低くとも発癌・白血病等の原因となる。核爆発後に発生する放射性同位体ヨウ素131による甲状腺がんの発症は有名である。(ヨウ素131:半減期約8日)ヨウ素は甲状腺ホルモンに使用されるため甲状腺に集積するが、日本人のように海産物を大量に摂取している人々は体内のヨウ素が飽和状態であり、甲状腺に取り込まれにくい。しかし海産物を食べられない大陸の人々にとっては常にヨウ素不足であり、簡単に甲状腺に取り込まれることが知られている。したがって、大陸の人々にとって核爆発の後にヨウ素剤を摂取することは理にかなっている。海産物を大量に摂取する日本人にとってヨウ素は飽和状態に近い。したがってイソジンでうがいする程度で十分である。
現在ウクライナはロシアとの戦いのため、地下鉄や地下壕を使用している。これらはかつてウクライナがソ連であった時代に米ソの核戦争に備えて核シェルターとして建設されたものである。米国にもスイスにも核シェルターは存在する。東京都にある都営大江戸線は故石原慎太郎氏が都民を核戦争から救うために核シェルターとして使用できるよう設計されている。しかし東京都にいる人々に核シェルターへの退避訓練は行われていない。北朝鮮や中国のミサイルは数が少ないと考えられるがロシアの核ミサイルは非常に多い。核のボタンが押されてからロシアからのICBM(大陸間弾道ミサイル)であれば20分以内に到達する。近海に潜むロシアの原子力潜水艦から発射される潜水艦発射型のSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)であればもっと早く着弾するであろう。
そして国民だけではなく政府においても、日本では二度と核は使われないとの大前提が存在するようである。それは大きな間違いである。ソ連もロシアもプーチンも自分たちが不利になった場合には核を使用すると言っている。ウクライナ危機がエスカレートするようならば政府はロシアの核が使用される前提で避難計画を立案し訓練する必要があろう。
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