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2022-09-07 00:00
(連載2)自民党改憲案の問題点-壊れた国会の'ブレーキ機能'-
倉西 雅子
政治学者
言い換えますと、首相と議員は、緊急事態宣言の長期化において利害を共有することとなるのです。緊急事態宣言が両院の国会議員の地位、名誉、並びに、リッチな生活をも支えるとなりますと、国会に上述したブレーキ機能を期待することは難しくなります。首相と国会議員は、一蓮托生の関係にあるのですから、両者結託して緊急事態の長期化を図るかもしれないのです。
それでも、あくまでも危機的状況に対応するための臨時的な措置なのだから、緊急事態が長期化するはずはない、とする反論もありましょう。しかしながら、過去並びに現在の状況を観察していますと、長期化の懸念は深まるばかりです。かのディストピア小説、『1984年』では、世界を三分割する三つの国の独裁者が、各々戦争の危機を国民に訴えることで軍事独裁体制が維持されています。現実にあっても、かつてのソ連邦にあって全世界を震撼させたスターリンの独裁体制は、戦争終結後も武装解除せずに軍事体制を維持したことに起因していますし、北朝鮮の金王朝独裁体制の永続化の要因も、休戦状態にある朝鮮戦争を背景に常に臨戦態勢が敷かれている点に求めることができます。また、ウクライナ紛争を見ましても戦況は膠着化する兆しがあり、長期化を予測する専門家もおります。否、狡猾な政治家、あるいは、超巨大な業界団体など政治的な影響力を持つ圧力団体であれば、‘緊急事態’を意図的に長引かせることで、憲法上の緊急事態条項を悪用して、民主主義国家を合法的に独裁体制に移行させようとするかもしれません。
その一方で、震災や水害などの自然災害であれば、国民の多くは、同宣言の継続期間を体験的に予測できますので、長期化のリスクは著しく低下します。緊急事態条項新設の説明に際して、自民党が自党のウェブサイトで震災への備えを強調するのも、国民が独裁体制の永続化リスクがこの場合顕在化しにくいからです。もっとも、自然災害であっても、政府が被災地の混乱を放置したり、復興を意図的に遅らせるような場合には、非常事態宣言が長期化されます。加えて、今般のCOVID-19のように変異性が高いウイルス、あるいは、現代の医学を以てしても有効な対策や治療法が存在しない病原体であれば、疫病を根拠とした緊急事態宣言の延長もあり得ましょう。今般の憲法改正に際して、緊急事態宣言条項が特に国民の関心を集めるようになったのも、政府によるロックダウンの強行やワクチン強制接種への不安があったからなのでしょう。
以上に述べてきましたように、「自民党憲法改正案」には、国会のブレーキ機能への期待も虚しく、日本国が独裁体制へと移行してしまうリスクが潜んでいます。自民党は、こうしたリスクを認識した上で、すなわち、意図的に同改正案を作成したのでしょうか。あるいは、そこまで深く憲法案に内在する問題点を精査することなく同案を発表してしまったのでしょうか。この謎については、さらなる洞察と推理が必要なように思うのです。(おわり)
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