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2022-08-30 00:00
(連載1)岸田首相が踏み込んだ原発推進
岡本 裕明
海外事業経営者
岸田首相にしては珍しく3歩ぐらい踏み込みました。首相が議長を務めるGX(グリーントランスフォーメーション)会議で再稼働ないし再稼働準備中の10基に加え、7基を再稼働させるべく国が後押しをすること、次世代型の小型原発開発敷設の検討、原発の運転期間の延長の可能性の検討を指示しました。本件は私は以前から指摘していたことですのでようやく明白な方向性を示したと思っています。岸田首相がなぜここまで言及することになったのか、主に2つあると思います。1つは電力ひっ迫は相当な問題でこの冬は試練となる可能性が大きいこと、もう1つは各種世論調査で明白な傾向が見えた岸田首相の指導力への疑問、「検討使」と揶揄されるなど自分でモノを決めず、意見を聞くことで世論の支持を得た勝利の方程式が陳腐化、崩壊し、むしろ逆効果になっていることがあるのだと考えています。
今日はその中の1つ目の点について意見を述べたいと思います。今年の冬のエネルギー事情はどうなるのでしょうか?これは大変読みづらい状況にあります。私はカナダでエネルギーや資源関連の投資を長くしています。原油関連は売却したもののガス関連株式は持っています。理由はガスがこの冬のキーワードになることがほぼ確実であるからです。特に暖房となると既に各家庭への設備を含め、ガスが主流であって石油ではありません。そのガス供給がロシアにより意図的に操作された結果、ガス価格は無謀無節操で無茶苦茶状態にあります。今は夏なのでまだよいのですが、今年の冬は争奪戦が起きることを想定した方がよいとみています。つまり資源のない日本に於いて国民生活と経済の安定と安全を考えた時、他国に極力頼らず、自国で賄う「自己防衛」は至極当然のスタンスになります。例えばガス暖房がコスト的に厳しくても電力供給が安定していればエアコンの暖房で代用することは可能です。
さて、昨年10月に政府が第6次エネルギー基本計画を打ち出したのですが、そこで話題になったのは再生エネルギーを30年までに倍増させる点でメディアの見出しに踊ったと思います。が、本当の着目点は原発を19年の6%から30年に20-22%にすることでした。そこはあまり注目されなかったのです。原発比率を3.5倍にすることが当時から盛り込まれていたわけで今回、仮に全部稼働すれば17基となり、計画値にはだいぶ近づくのであろうと察します。
もう一つはエネルギー基本計画を発表した際にはロシアのウクライナ侵攻はまだなかったわけで世界の緊張関係やエネルギー価格の高騰はリスク要因として盛り込んでいなかったのです。仮にガス価格が今後、さらに何倍にも上昇し、そこで高値安定するようなことになればエネルギー計画が破綻する公算もあるわけでそのためには自国自前で出来る限りのことをするのは政府として当然の判断だと考えています。もちろん、この間に再生可能エネルギー源も更に敷設していけばよいと思いますが、曇りや夜ではダメ、風が吹かないとダメといった一定の制約がある太陽光や風力発電がエネルギーの主役にはなれず、結局政府も電力会社も絶対安定の原子力に頼りたいのが実情です。そして大手電力会社の決算はこの4-6月期は7社が赤字なのです。(つづく)
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